6 「Siren」
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蒲にとって、まるで蜘蛛の糸のように見えた。汀たちを守るのも“家族”として当然だが、“家族”なら凪だってその中に入るのも、また然りだ。
了承した保護者に目を輝かせた双子は、同時に抱き付くようにして菖蒲に礼を言う。いわば命の天秤を測るようなことをさせてしまった彼に申し訳なさと、それ以上に助けに行く判断をしてくれたことに対する感謝でいっぱいだった。
となると、今度は戦闘経験が無に等しい民間人たる菖蒲に一体何ができるかということだ。
「……俺は、ギギネブラの動きの特徴なんざこれっぽっちも知らんが。まさか俺に斧持って走り回れとか言うんじゃねえだろうな」
「言うもんですか。菖蒲おじさんは、回復薬とグレートの調合をお願いしたいんです。ハチミツはここに隣接するエリア1にあるので、すぐとってこれます。今は大型モンスターもあのネブラ以外いませんし、あんな狭いところで兄さんが4頭相手に立ち回りするとは思えないから、安全です。ただ調合する場所は万が一のためベースキャンプでお願いします。僕と汀が持ってきたありったけのアオキノコは、ここにありますから」
肩掛け鞄から乾燥アオキノコの粉の詰まった瓶を次々並べていく。グラムにすれば1000以上はあるだろう量で、これらをぴったり使い切れば、材料さえ整えば20個の回復薬を作れると少年は言った。薬草はドライフラワーのようにカサカサに乾いたもので、それもまたひとまとめに麻紐で括られて瓶に詰められていた。
調合レシピももらえば、あとは仮にも長年シノノメ楽団専属楽団医を務めてきた菖蒲である。失敗せずに作る自信は、十二分にあった。
調合冊子の最初のページにある回復薬の欄に目を通している菖蒲に、岬が「あともう1つ」と菖蒲の役割を付け足した。本に目を落としたまま促した彼に、岬がええと、と少しうかがうような声色で新たな役目なるものを説明し始める。
「そこにある樽爆弾を運んでほしいんです。僕たちは狩猟武器があるし、抱えるには樽が大きすぎて持てないんです。ただ、これはご存知の通り下手に衝撃を与えればその場で爆発してしまう危険な物ですし、対象はもちろんモンスターなので、ネブラと同じフィールドにおじさんが行かなくちゃいけないんですけど……」
「わかった。どこへ置けばいいんだ?」
「いいんですか? 危険ですよ?」
「ガキどもに命張らせて俺だけ安全圏でぬくぬくと調合なんざ、頼まれたってやらねえよ。…で?」
「…ありがとうございます。置く場所は落とし穴の上です。置いたらできるだけ早く、遠くに退避してください。後ろから爆風が来て飛ばされそうになったら、自分から飛び込み前転の要領で転がると、衝撃が少なく済みます」
「了解だ。やれるだけやってみよう」
手始めに3人でありったけの材料をつかって回復薬の調合を始める。ポーチの容量
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