6 「Siren」
[4/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
…戦えない……」
「そもそも俺は狩猟武器すら片手で持ち上げられねえからな。背負ってくなら兎も角…うわっ!」
いらだちを紛らわすように柄にもなく長広舌になっていた菖蒲は、不意に跳ねたベッドに驚いて声を上げた。武器の手入れをしていた汀も何事かと双子の片割れを見やる。
「……そうですよ。僕たちは戦えません!」
勢いをつけて立ち上がった岬は、視線を自分の手から曇天に移して言い切った。きゅっと締まった握りこぶしは、何かの決意を秘めるように胸の前にそろえられる。
「なんだ、開き直ったのか、岬」
さっきから俺が何度も言ってんだろ、と少年を見上げていた菖蒲は、つまらなそうに再びベッドに横になろうとした。汀も意識をハンマーに集中しようとして、ふたたび上がった菖蒲の驚く声に面倒そうにそちらに目をやる。
しっかと菖蒲の手を握った岬が、きらきらと輝いた眼差しで2人を交互に見つめた。その瞳に先ほどまでの絶望の影はない。理知的な光と決意の炎を秘めた湖水色の目は、普段の聡明な岬少年のものであった。
「僕たちは、戦えません。だけど、罠や角笛を使ってサポートするくらいならできます!」
「サポート?」
「師匠と弟子が、まだ弟子の実力に合わないクエストに向かうときによくやることです。基本的に倒す主体は師匠がやって、弟子はそのモンスターの特徴を学びつつ、落とし穴やシビレ罠を仕掛けて師匠の狩りのサポートをする。僕とみーも父さんと一緒に狩りに行くとき何度もやりました」
「そっか……そうだね。なんで今まで思いつかなかったんだろ! みーやる! やりたい! にいちゃの役に立てるなら!」
「……それは、安全なのか?」
「そりゃあ、完璧に安全とは言い切れません。なんたってここは“凍土”という狩場なんですから。でも、モンスターたちは基本目の前の得物を襲う習性がありますし、その注意を引くのが師匠―――この場合、凪兄さんの役目になりますから、危険度は凪兄さんの力量による…つまり低いと思われます。兄さんならやってくれます……絶対に!」
「それで、クソガキの助けになると? 本当に?」
「なります! そもそもモンスターを狩るというのは複数のパーティでやるのが基本です。ひとりが攻撃してる間に他が態勢を整えたり、あるいは4方向から一斉に攻撃の雨を降らせることでモンスターの体力を一気に削りに行ったり、やり方はいろいろありますけど、今回ならそれに近いことをできます。僕たちがネブラの気を引いている間に、兄さんが攻撃するんです。1人で避けつつ攻撃しつつを繰り返してたら、兄さんの体力が削られるばっかりです」
左右から必死に縋りつかれ、それでも菖蒲は腕を組んでしばらく考えていたが、やがてうなずいた。
岬の提案は、本心から今すぐ凪を助けに行きたかった菖
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ