6 「Siren」
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しまったからだった。
(ったく、何やってんだか。油断のし過ぎだ、馬鹿野郎。……長くユクモに浸り過ぎて、怠けたか?)
自分で自分を嘲罵した。そうでもしないと、まるで自分が狂ったように感じる。まあ、意味はあるのか無いのかは、定かではないが。
(……むしろ、とっくの昔に狂っていたかな)
先ほどから明滅する視界でちらちらと姿を現しているのは、夢だと思った、思いたかった、あの白蓮を模した《花》だ。恐ろしいことに、凪の脳の中ではギギネブラの身体の中に《花》が咲いて見えた。夢で凪の身に起きたような「喰い破る」ようではない。むしろ、「重なっている」ような、そんな印象を受ける。
自分の血濡れの左腕を恐る恐る覗くが、そこに《花》は見当たらない。ほっと息をつくが、今はそれどころではなかった。
一体あの花は何なのか。
(それさえはっきりすれば……いや、しても意味分からんな。とりあえず《親》は、あれ…か?)
ひときわ大きく花弁の多い<親花>。それは、ギギネブラの心臓に重なっている。…いや、だから何なのか。分かったところでどうしようもない。なぜ自分は《親花》を確認したのだろう。
日も沈んだ曇天の夜に、淡いながらも放光する香り高い《花》たちに、思わず目が吸い寄せられる。
お得意の突進をしてきた1頭を緩慢な動きで避け、思考する余裕もなく刀を振り抜く。何とはなしに狙ったのは、体の側面に咲いた《花》の1つだった。目立つものだからつい狙ってしまうのだ。目立つトカゲの尻尾をつい狙ってしまう夜目の利くフクロウのように。
パリィン...!
ガラスが割れるような音と共に花が砕け散る。と思えば、ギギネブラが転倒した。追撃しようにも横からくるもう2頭目の毒弾にたたらを踏み、後ろに跳び退く。1頭目は紫の毒ガスにまぎれ、視界から消えた。
(触れられる、のか? あの《花》…)
困惑の中、霧の向こうに揺れた影に反応して横に跳び、同時に一閃。舞った血の中には白い雫型の花びらもあった。<花>の破片だ。
間髪入れず紫の煙を突き破ってきたもう1頭の毒弾もはじき返す。片腕でもぶれることなく安定した動きができるのは、凪の腕は見た目よりずっと鍛えられている証拠であった。
「…あ、しまった。ああもうホント馬鹿、俺の馬鹿ッ」
エリア2の丁度中央。ぼうっとしているうちに前後に挟まれた形となってしまったことに気付いて、舌打ちする。集中力が著しく欠如していた。無理もない、凪が戦闘を始めてからもう6時間は経過している。むしろこの間ほとんどずっと意識を張りつめ続けた凪の精神力は、常人ではとても出せないものだろう。
ただ、どんなに人間離れした精神力であろうと彼が生き物である限り限界はあるし、そこで死ねば所詮自然の中ではどんぐりの背比べ。早
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