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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
6 「Siren」
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帰らなかったら…」

 聡明な岬のことだ、想像はしていたのだろう。だんだんと絶望の顔に染まっていくその表情の横で、生まれ持ったその天性の勘だけは野生動物にも劣らない汀が、嫌そうな顔をしている。

聞きたくない…

 2人の心の声が手に取るようにわかった。が、言わなければいけない。
 心を鬼にして、しっかりと2人の目を見つめながら言った。揺るぎない視線に、自分から目を逸らすことも出来ない双子は少し、たじろぐ。

「俺達は、グプタ町に帰る」
「ッ!!」
「…は? ……ちょっと、待ってよ…あやにい。ごめん、もっかい言ってくれる? 聞き間違えたかもしれな…」
「俺たちは明日の朝、日の出と共に…凪が帰ってこようと、帰ってこまいと、凍土を離れてグプタ町に戻る。そういったんだ、汀」
「な…んで……」
「それがあいつの望みだからだ。岬、あいつは俺にこう言ったんだよ。『明日の朝、山間から日が昇ってもベースキャンプに俺が戻らなかったときは、俺を死んだものとしてグプタ朝へ帰れ』、とな」
「「ッ!?」」

(ったく……こんな役回り俺にさせやがって……恨むぞ、クソガキ)

 どうせまたにへらっと笑って軽く謝るんだろうな、と頭の中でへらへらしている三頭身の凪を小突く。

「もとから、正直言ってあいつに勝ち目なんぞねぇだろう。明日の朝、凪がなんとか生きてここまで逃げ帰れれば、俺たちの勝ち。時間を超えちまったら、竜たちの勝ち、っつーわけだ」
「そんなことありません! 兄さんならきっと、ネブラも倒して、無事に帰ってきます! 時間がかかったとしても! 百歩譲っても、死ぬなんて!」
「だからなあ、現実的に考えてみろ、岬! 衆寡敵せずって言葉知らねえのか!」
「凪兄さんの力は一騎当千です! その実力はおじさんが一番よく知ってるでしょう!?」
「シュ、シュウカテキセ、セ……? イッキ、ト…豆腐……?」
「兄さんは、たった1人であのユクモ村を襲ったファンゴの大群を殲滅したんですよ!? その目は節穴ですか!? それとも兄さんに帰ってきて欲しくないとでも!?」
「ふざけるな!!!」

 沈黙が下りた。菖蒲は今、本当に怒っていた。ギギネブラの咆哮を受けたように一瞬動けなくなった岬に、怒気を押し殺した――否、押し殺しきれない声で語りかける。

「俺だってなあ、助けられるもんなら今すぐ駆けつけたいんだよ……! だがな、俺は一介の医者であって、あんな飛竜を相手にどうこうできる力なんざねえ…無力なんだ……!! それでも俺は、お前らだけは守り通さなくちゃいけねえ。そのためならお前に恨まれようが憎まれようがなんだってする。それがクソガキ……凪と交わした最後の約束であるなら」
「……」
「センメ…煎餅……?」
「「……、……………。」」
「へ?」

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