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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
6 「Siren」
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ズ...ズウゥゥゥン......

バサバサッ
キャァー…! キャァー…!

 凍土が震えた。
 木々の雪は落ち、絶対強者たる竜の殺気に息を潜め身を寄せ合っていた鳥たちは、悲鳴に近い鳴き声を上げて一斉に空へと飛び立つ。

「……みさ、きぃ…」
「うん……今の、ただの地震じゃない。どこか、たとえば地下の洞窟か何かが崩れたような、そんな揺れ、だ」
「洞窟?」
「はい。……あの、菖蒲おじさん。兄さんは、あの時おじさんに何か、言ってましたよね。僕たちがこやし玉をつけていたときのこと、です。あれ……なんて、言っていたんですか」

 疑問形は取っているが、その問いは命令のように強い力を持っていた。その裏には、菖蒲にはわかる、隠しきれない恐怖と、疑心とを秘めて。
 菖蒲は雲に透けて見える太陽の位置を確認した。灰がかったクリーム色の太陽は、すでに一番標高の低い山の頂にさしかかっていた。日が暮れるのが早い凍土において、それがだいたいのところ午後3時から4時の間を意味するということを、医学書にとどまらず多くの本を漁りその手の知識に通暁している菖蒲は知っていた。
 静まり返った凍土に響く4頭の竜の蛮声から転がるようにベースキャンプに逃げ戻ってきてから、早5時間。帰ってすぐに転がしニャン次郎に緊急事態の報告を頼んだ。そういう時用の手紙がキャンプには備え付けであるのだ。ニャン次郎も超特急で向かうと確約してくれたから、そろそろグプタ町にはついただろうか。
 急激に暗くなってきた、朱く光る太陽を見る。
 この時期、凍土は4時を過ぎれば急激に暗くなり始める。あたたかな日がある時間は残り1時間も無い。

―――『明日の朝、山間から日が昇ってもベースキャンプに俺が戻らなかったときは……』

 そして、朝が遅い凍土の夜明けは、8時。

(タイムリミットは、16時間……だが)

 いくら凪でも、飛竜に狙われながら16時間も走り回れるわけがない。必ずどこかで休息を入れる。入れなければ、死ぬ。が、入れたからと言って完全に緊張を解いてしまえば、その隙を狙って喰われかねない。凪は強いが、相手が4頭も居ると話は別だ。生死をかけた戦いは、先に緊張を切らしたものが敗者となる。しかも、たった一人で戦わなくてはならない凪の張りつめた糸のような緊張は、そう持ちはしないだろう。
 通常パーティを組むハンターなら交代に休眠をとれるが、凪の現在のパーティはここでただ彼の無事を願って空を見上げるしかできないのが現状だ。

(だが、俺たちに何ができる?)

 ハンターになってまだ日も経験も浅い2人のハンターと、こういう場面においては役に立たない医者が1人。
 ひとつ大きな深呼吸をすると、菖蒲は声帯を震わせた。

「……明日。朝日が昇ってもベースキャンプにあいつが
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