第十二話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その6)
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一瞬だが部屋の空気が和んだ。誰も口を開かなかったのはその空気を楽しみたかったからかもしれない。それほどリヒテンラーデ侯が話した事件の概要は重かったしウンザリした。少しの沈黙の後、リヒテンラーデ侯が話を続けた。
「ベーネミュンデ侯爵夫人の処分だが陛下のお気持ちを考えると死罪と言うのは避けたい」
リヒテンラーデ侯が一人ずつ顔を見て行く。確認を取ろうというのだろう。ブラウンシュバイク大公、ブラウンシュバイク公、そしてリッテンハイム侯も首を横に振らなかった。俺の番になった、俺も首を横に振らなかった。言いたい事は有る、しかし俺以外の四人が既に死罪には反対という事で同意している。一番弱い立場の俺が一人反対しても意味は無いだろう。下手に反対して反感を買うのも考え物だ。
「それでどうする、何もせぬと言う訳には行くまい」
リッテンハイム侯が問いかけた。その通り、処罰が無いという事は有りえない、それを聞いてからでも反対は遅くない。
「侯爵夫人に証拠を突きつけ次は容赦せぬと釘を刺す、それと領地を一部召し上げることになるだろう。侯爵夫人の屋敷には政府の手の者を入れ、その言動は二十四時間監視下に置かれる。また外出は厳しく制限され屋敷への外部からの出入りも同様に制限されることになる」
リヒテンラーデ侯の提案に皆が顔を見合わせた。ブラウンシュバイク大公がリヒテンラーデ侯に念を押す。
「つまり事実上の監禁、そう見て良いのかな」
「そう見て良い」
ブラウンシュバイク大公が周囲を見た。リッテンハイム侯、ブラウンシュバイク公、そして俺……。視線で賛否を確認している。大公が一つ頷いた。
「良かろう、特に異議は無い」
「ではそうするとしよう」
今度はリヒテンラーデ侯が周囲を見渡す。本当に異議は無いのだなという念押しだろう。俺に向けた視線が少し厳しいように感じた、反対するとでも思ったか……。
あの女が無力化されるならそれで良い。事実上の監禁、あの女にとっては屈辱だろう、生きていること自体地獄のはずだ。それで十分だ……。それにあの女が今後問題を起こしてもここに居る男達が姉上の味方になってくれるだろう。その意味は大きい。今更ながらだが姉上が政治的な動きをしなかった事が大きかった。
「ところで、この件、陛下に御報告しなければならん。そしてベーネミュンデ侯爵夫人に処分を申し渡さなければならんのだが……」
リヒテンラーデ侯の言葉が途切れた。そして幾分躊躇いがちにブラウンシュバイク公に視線をむけた。
「ブラウンシュバイク公、公に私の介添えをお願いしたいのだが」
その言葉に公が顔を顰めた。
「私が、ですか?」
「うむ、政府、貴族の総意と言う形を取りたいのだ。大公とリッテンハイム侯は例の一件が有るからの、侯爵夫人が素直にならんかもしれん」
例の一件か
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