第七章
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第七章
「やっぱりサッカーはいいな」
「じゃあ。これからはね」
「ブエノスアイレスに帰ったらな」
どうするのか。彼は妻に対して述べた。
「子供達のサッカーチーム立ち上げるか」
「そうして子供達にサッカーを教えてね」
「ああ、俺やマラドーナみたいな選手を作るか」
「あら、大きく出たわね」
「夢は大きく持たないとな」
本来の明るく屈託のない笑みでだ。ロペスはミレッタに答えた。
「だからな。アルゼンチンを今以上に凄いサッカー大国にしてやるからな」
「頑張ってね、これからも」
「ああ、俺はやるからな」
こう言ってだ。彼は意気揚々としてだ。ブエノスアイレスに戻った。そしてすぐにだ。彼はサッカーチーム、子供達のそれを立ち上げた。そうしてだったのだ。
子供達にサッカーを教えだした。その彼に対してだ。
かつてのチームメイトやマスコミの面々はだ。怪訝な顔で彼に問うたのだった。
「サッカーから離れるって言ってなかったか?」
「それでまたどうしてなんだ?」
「サッカーに戻ってそれに」
「子供達のチームの監督になるなんてな」
「一体どういった心境の変化なんだい?」
こう口々に彼に問う。その彼等にだ。
ロペスは微笑みだ。こう答えるのだった。
「気付いたんだよ」
「気付いた?」
「気付いたっていうと?」
「俺はやっぱりサッカーが好きなんだよ」
このことをだ。彼等に言ってだった。
それからだ。彼はいつもこう答えた。
「サッカーはプレイするだけじゃないからな」
「教えることもか」
「サッカーだっていうんだな」
「そうさ。俺は選手としては引退したさ」
それはもうだ。身体能力が限界だから仕方なかった。だが、だった。
彼はそれでもだとだ。今は悟りきった顔で言えたのである。
「けれどサッカーは一生できるだろ」
「教える立場としてか」
「その立場でなんだな」
「ああ、これからはこうしてサッカーをやっていくさ」
教える立場でだ。そうするというのだ。
「そうするからな」
「そうか。じゃあこれからは監督か」
「それかコーチとしてサッカーやっていくんだな」
「俺は死ぬまでサッカーをやるよ」
この考えにも至ったのだ。ナポリでの旅から。
「そうするからな」
「そうか。サッカーはプレイするだけじゃない」
「教えることもなんだな」
「それもサッカーか」
「あの子達と一緒に生きるさ」
暖かい目でだ。自分の前でサッカーを楽しんでいる子供達を見ての話だった。
「これからはな」
こう言ってだ。彼は子供達に教え共にサッカーをしていくのだった。サッカーから離れた彼の辿り着いた先はサッカーだった。戻ったのだ。だがその戻ったサッカーには。彼は選手だった頃とはまた違う想いを胸にしてだ。そのうえ
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