ラヴリー・スタイル
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「もうしばらくこのままでいいですか?」
と言った俺の腕を優しく振り解くと、再び向かい合うようにして立つ。
山田先生の瞳は潤み、頬は上気しているように見える。
俺は意を決して山田先生の両肩に手を載せたまでは良かったが、ヘタレてしまいその先へと進むことはなかった。
お互い見つめ合ったまま、ただいたずらに時だけが過ぎて行く。
が、ここで行動を起こしたのは山田先生だ。
俺の両頬に手が添えられたかと思うと、ゆっくりと自分のほうに導く。
数秒後、俺と山田先生の唇は――触れ合っていた。
とはいっても、大人のキスというより、まるで挨拶でも交わしているようなキス。
そうだとしても、俺には充分に衝撃的な出来事だったが。
ことが済んだ後、俺の頬から手を離し、一歩後退った山田先生は、
「これで満足ですか」
と聞いてくる。
何も言えないでいる俺に、
「身体だけではなく、ココロも大人になって下さいね」
と俺に告げた。
この言葉にはどんな意味が込められているのだろうか……今の俺には理解出来そうにない。
俺は山田先生に絞りだすような声で、ゴメンナサイと謝ることしかできなかった。
そんな俺に山田先生は慈愛に満ちた笑顔を見せると、
「アーサーくんは織斑くんのところに行ってメモを届けてから、織斑くんと一緒にメモに書かれている場所に来てくださいね」
と言うと、用事はすんだとばかりに山田先生は俺の部屋を去って行った。
この後、どうやって一夏の部屋に行ったのか俺の記憶は定かではない。
一夏が一緒だということは迎えに行ったのは確かなのだろう。
メモに書いてある場所へと向かう途中、何を話しても上の空の俺に、
「何か、あったのか?」
と言った一夏は心配そうな顔をしていた。
メモを見ながら照明が足元にしかない薄暗い通路を進んだ先にあったのは、『M―38』と書かれた金属製のドアだった。
そのドアを押し開き、俺と一夏はそろそろと中へと進入したが、ドアの内側の空間は照明が点されておらず真っ暗。
「誰かいませんか」
の一夏の言葉にも反応はなし。
十歩ほど進んだろうか、今まで開いていた金属製のドアが大きな音を立てて閉まる。
目を凝らしてみてもまるで何も見えない空間で、俺は背中に衝撃を感じたかと思うと、数歩進んだ先で床にうつ伏せに倒れた。
俺の身体は身動きが取れないように背中を押さえられた挙句、左腕を捕まれている。
左肩に痛みが走り思わず、
「痛てえ!」
と叫んでいた。
俺の声が聞こえたのか一夏の、
「大丈夫か、アーサー」
という俺の無事を確かめる声が聞こえ
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