第一部 vs.まもの!
第14話 きょうふのいちや!
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のにさ。その後全然関係ない所でさらわれちゃって、その後……」
「さらわれた?」
「貴族連中にだよ。ひどいよ。あの子可愛かったからさ……」
洟をすする音。ジェシカが目許を拭うのが、暗くてもわかる。
「神様も天使も助けてくれなかったんだよ。あの子には何もしてあげなかったんだよ」
「神なんかいねぇよ」
ルカがびくりとして顔を上げ、ウェルドを見た。
「文句あんのかよ?」
「……い、いえ……」
ウェルドは、ひどく気が立っている自分自身を感じていた。
「あんた、バイレステのお偉方がセフィータをはじめとする途上国を支配する方法、知ってるかい?」
「いえ、存じませんが……」
「『楽しい異文化交流』さ。相互理解をお題目に、両国の子供らを会わせる場を用意するんだ。貧しいセフィータの子供たちが目にするのは、バイレステの進んだ技術や豊かな暮らし……。そうやって何も知らねえ次世代の担い手を文明力で圧倒する」
「……」
「セフィータの子供たちはバイレステに憧れて、必死に勉強するんだ。それが故郷を豊かにすると信じてな。だけど、バイレステの学校に入って待っているのは激しい人種差別といじめだ。学校という閉鎖された空間の中で、砂漠の民である事はいつしか劣等感になり、故郷を憎むようになるんだ。そんな時、セフィータからの搾取を続けるバイレステ人はこう言う。バイレステに与しないセフィータの部族があるぞ、と。バイレステに盾衝き、侮辱し、豊かな国を奪い破壊しようとしている連中がいるぞ、ってな。そんな時、セフィータから来たセフィータ人はどうすると思う?」
「ご、誤解を解こうとするんじゃないでしょうか?」
「甘いな。『バイレステ人として』戦おうとするんだ。セフィータ人であるコンプレックスから逃れようとして、豊かで先進的なバイレステ人であると認められようと、同胞に剣を向ける。誰よりも苛烈にな。そうやって村が――」
焼けたテント。
散乱する織機の残骸。
焼けた砂と混じり合う染料。
浮かぶ死体によって汚れたオアシス。
そして、無数の矢に貫かれて倒れている、自分とよく似た顔の――。
ウェルドは声を詰まらせる。
深呼吸し、続けた。
「……みんな逃げればよかったんだ。伝統が、誇りが、文化と武力の違いの前に何になる? 馬鹿だよ。大馬鹿だ。そんなものにこだわって、命を捨てるなんて――」
「ウェルドさん?」
「途上国が伝統のゴミクズなら、先進国は偽善のゴミクズだ。ゴミクズの上に君臨する神もまたゴミクズに決まってる! そうは思わねえか? でもな、神なんかいねえんだ。こんな残酷な事が罷り通るなら神なんかいないって、お前、思った事ないか? お前だってホントは一度くらいはあるんじゃねえかよ?」
ルカは唇を戦慄かせながら、答えを探して
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