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とらっぷ&だんじょん!
第一部 vs.まもの!
第14話 きょうふのいちや!
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るんです! 取り残されているんです! 助けてください!」
 ドレスティは目を背けた。
「……諦めるんだ」
 ノエルは肩をふるわせる。そして走り出した。新人冒険者の宿舎に続く見晴らしのいい一本道を、共に駆ける。
 後ろからカチャカチャという音が追ってくる。
 走りながら振り向いた。
『紫の剣』だった。追ってくる。音は、のたうつ剣が石畳を打つ音だったのだ。
「振り返るな!」
 ノエルに向けて言った。
 早い。
 追いつかれる。
 ウェルドは立ち止まり、右手にトラップカプセルを握りフリップパネルを出現させた。かつて人間だったそれは、フリップパネルに弾き飛ばされ、近くの壁に叩きつけられる。
 その体の下に、別のトラップの陣が敷かれる。ウェルドはトラップの主を捜した。見つけるより早く、雷鳴が耳をつんざいた。
「早く来い!」
 レイアだった。宿舎の扉を開けて、立っている。エレアノールも一緒だった。
 二人が駆けこむと、直ちに入り口が施錠された。こちらです、と二本の剣を両手に携えたエレアノールが、二階を顎で示した。
 エレアノールにレイア、ウェルドにノエル、四人が二階に駆けあがると、四本のポールが階段を封鎖した。アーサーのトラップだった。
 息を切らし、吐きそうになりながら、ウェルドはノエルと一緒に廊下に座りこむ。建物内は真っ暗だ。窓際に机やベッドでバリケードが作られているせいだ。
「助かった」
 目が慣れてくると、レイアの顔がぼんやり白く見えた。
「……お前には借りがある」
 破壊音が一階に響きわたり、ノエルがしがみついてきた。出入り口が壊され、立て続けに、各部屋が荒らされる音。それは階段を上り、ポールにぶち当たった。アーサーが顔面蒼白になりながら、トラップカプセルを握りしめている。
 通りを走る音。
「おい、新入り共……」
 誰かが様子を見に来たのだ。逃げろと叫びたかった。歯を食いしばるウェルドをよそに、敵の注意がポールからそれる。
 長い悲鳴が一階から外に逃げていった。悲鳴はいくらも逃げぬ内に途切れた。
 宿舎の二階を、闇と沈黙が満たした。
 アーサーが脱力して座りこむ。薄ぼんやり見える顔の数を、ウェルドは数えようとした。
「みんな、いるか? 揃ってるよな?」
 自分を含めて十三人いるようだった。
「なあ、ウェルド……」
 パスカの声が聞く。
「お前、ディアスと一緒だった筈だよな?」
 他に誰も口を利かないが、答えを要求されているのは明らかだ。出来るならこのままずっと黙っていたかった。
「ウェルド、どうなんだよ?」
 パスカの声が上擦る。彼の息が震えているのがよくわかった。
「ノエル、あなた知ってるよね?」
 と、シャルン。
 ノエルの息が早くなる。少し過呼吸気味だ。
「あの人――」
 
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