第一部 vs.まもの!
第14話 きょうふのいちや!
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まった。二人、三人と、人間が落ちてくる。
ノエルが悲鳴を上げていると、ウェルドは気付いた。呆然として、それどころではなかったのだ。ノエルもまた、自分が叫んでいる事に気付いていないのではと思えるほど取り乱していた。褐色の髪をかきむしり、うずくまってしまう。
割れた窓に、炎をまとった冒険者が足をかけ、ウェルドを見下ろす。その左腕の……紫の剣。
氷のスパイクが五本、紫の剣にとらわれた男に向けて連射された。
「こんな時に阿呆面をさらして見物か? いい身分だな」
ディアスが左腕に抱えた石版を、右手の指でなでる。新たに氷のスパイクが現れ、彼の体の周囲を囲んだ。
「先に行け。その娘を連れて逃げろ」
ウェルドは熱い砂を踏み、ディアスと睨みあう。
「ディアス、お前――」
「勘違いするな、足手纏いは要らぬと言っているのだ! 行け!!」
「…………クソッ!!」
ノエルの二の腕を掴み、立たせる。
「だめ!!」
踵を返し、砂を蹴立てて路地に入る。ノエルは半ば引きずられながらも、ディアスが立っている方に手を伸ばした。彼女の涙が戦場と化した町に落ち、たちまち乾いていく。ウェルドは振り返らなかった。煙をかき分け、咳きこみながら路地を抜ける。
と、剣を突きつけられた。突きつけた男は、正気の人間だった。
「――お前、こないだの新入りじゃねえか!」
酒場で会った事のある冒険者の一人だった。
「お、おい、あんたの仲間がさっき……」
「あいつの事は忘れろ、もう死んだんだ!」
来い、と手で合図して、新人冒険者の宿舎がある区画へと、道を渡っていく。そちらはまだ燃えていなかった。カルス・バスティードの建物の大半が石造りだから、延焼が遅いのだ。
「紫の剣よ……」
ノエルが走りながらウェルドの手を振りほどき、呟く。
「何だって?」
「紫の剣――『リトアラの殲滅』よ! 忘れたの!?」
「ネリヤ!」
別の道から走ってきた女性の冒険者と合流する。ネリヤと呼ばれた女は、ウェルドの前に立つ冒険者の肩を掴み、揺さぶった。
「ドレスティ! イロットは? イロットはどこ!?」
「イロットはやられた、フォールトに……」
女は目を見開き、頭を振った。
「……フォールト、フォールト、なんて愚かなの……。いつもの狩り場を外れたばっかりに……」
「オイゲンの親父に言われたこと、あいつ気にしてやがったんだよ。弱い魔物しか相手にできない骨なしだってな……」
ウェルドとノエルを振り向く。
「お前たちは先に宿舎に戻ってな! 出るんじゃねえぞ!」
「あんた達はどうするんだよ?」
「バルデスさんとクムランさんの所にいく。大丈夫だ、あの人たちなら何とかしてくれる!」
「待ってください!」
三人の目がノエルに集まった。
「あっちに、あっちに仲間がい
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