暁 〜小説投稿サイト〜
彷徨った果てに
第二章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第二章

「シェフを呼んで経営するにしてもな」
「違うのね」
「ああ、だからな」
 それでだというのだ。
「かといってもイタリアやそうした国の料理でもな」
「違うのね」
「そう思う。これが日本でも中国でも同じだろうな」
 アジアの国々でもだ。それは変わらないというのだ。
「やっぱりな」
「そうなのね。それじゃあ」
「デザート食って出るか」
 味はよかったので最後まで食べることにした。そこまでして食べ終えてだ。
 この日は家に帰った。次の日はだ。
 飲み屋に行った。そこでカクテルを飲みながらタンゴを観る。アルゼンチン名物のそのタンゴをだ。男女が絡み合う艶かしい踊りは彼の好きなものだ。しかしだ。
 彼はだ。ここでも浮かない顔で言うのだった。
「これもな」
「違うのね」
「ああ、違うな」
 声も浮かないものだった。
「タンゴを踊るのもこうした飲み屋を経営するのもな」
「やっぱりやりたいことじゃないのね」
「サッカーでは誰にも負けないさ」
 離れている筈のこれも話に出した。無意識のうちにだ。
「それでもタンゴになるとな」
「あなたタンゴ上手じゃない」
 タンゴは趣味でだ。よく踊っていたのだ。このことはファンの間でもかなり有名だった。しかしそのタンゴについてだ。ロペスは浮かない顔でミレットに述べた。
「俺より上手な奴なんて幾らでもいるからな」
「だからなの」
「ああ、ダンサーにはならない」
 このことは断言したのだった。
「やっぱりな」
「そうなのね」
「かといって店の経営もな」
「それもなのね」
「経営自体がな」
 ひいてはだ。そうした立場になること自体がだというのだ。
「俺には向いてないだろうしな」
「だからしないのね」
「ああ、止めておくな」
 こう言うのだった。
「その方がいいな」
「じゃあ一体何にするの?」
「とりあえず経営やダンサーでないことは間違いないな」
 このことはわかったのだった。彼自身もだ。
 では他に何があるのか。ロペスは席でカクテル、テキーラサンライズを飲みながらだ。ミレットに言った。
「俺は何かを書いたり芸術とかもな」
「興味ないわよね」
「ああ、ない」
 だからそれは最初から考えていなかった彼自身もだ。
 そしてだ。他にはだった。
「かといって政治家とかタレントとかもな」
「そういうのも?」
「政治家は政治家に任せていればいいんだよ」100
 これが政治に対する彼の考えだった。
「俺達は投票するだけだ」
「そうね。やっと落ち着いてきた感じだし」
 政情不安で有名でしょっちゅうクーデターが起こったアルゼンチンもだ。そうした意味では何とかよくなってきていたのだ。経済もそうなってきている。
「だからな。そういうのはなのね」

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ