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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十三話 独立混成第十四聯隊の初陣(上)
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える。その両脇に戦務主任参謀である荻名中佐。そしてもう一人、参謀らしき大尉が司令官の両脇に控えている。
「うむ、貴官の武名は聞いている。――事態は急を要するので前置きはなしだ。
情報参謀、始めよ」
西津中将がそういってかるく掌を上げると、三十手前の大尉が説明を始めた。
「自分は軍次席情報参謀の大久保です。現在の戦況説明をおこなわせていただきます。
現在、我々集成第三軍は正面の敵猟兵旅団への大規模な戦術的奇襲に成功しました。
我が軍正面にて防衛線を構築していた一個連隊の潰乱後、我々は橋頭堡の占領を最終目的として突破を試みております。ですが後方に配置されていた猟兵聯隊による防衛線の再構築と呼応して後方から聯隊規模の騎兵を中心とした四・五千名規模の部隊が第三軍主力側面へ迂回機動を行っている事が導術により探知されました。
軍主力を防衛線の突破に向けている為、我々はこの迂回部隊に対して予備の独立部隊である第十四聯隊をあてる事を決定しました」
 荻名戦務主任参謀がその後を引き取り、若い聯隊長に問いかける。
「この部隊があの東方辺境領胸装甲騎兵連隊だとしたら、こちらの主力部隊の側背をつかれることになってしまうのはいかにも不味い――理由は分かるな?」
 かつての教官の問いに馬堂聯隊長は背筋を伸ばして答えた。
「はい、砲兵隊にまで被害が及んだら攻勢の遅延を余儀なくされてしまいます、ここで敵に態勢を建て直す猶予を与えるのは最悪の下策です。軍直轄砲兵隊の組織的な火力支援が行われ、防衛線を敷かれたら〈帝国〉の予備部隊が上陸するまでこちらもかなりの消耗を強いられてしまいます。そうなると今回の攻勢が失敗に終わってしまう可能性が極めて高いからですね?」

「あぁ概ねその通りだ。奇襲に成功したからこそ軍主力は全力を挙げて攻勢を継続せねばならない。足を止めたら勝機を逃してしまうからな。だからこそ予備戦力として温存していた単隊戦闘能力の高い貴官の第十四聯隊をこの部隊にあてようと思う」
 その答えに豊久は唇を引き攣らせた。
「騎兵と殴り合いですか。ならば擲射砲大隊があればかなり楽になるのですが―」と視線を飛ばすが荻名中佐は即座に首を振って答えた。
「残念だが砲兵はほぼ全て前線に投入している。想定外に近衛総軍の反攻が滞っている所為で近衛総軍との作戦境界線付近の部隊への振り分けが多くなってしまっているからな。
今から第二陣の部隊編成を開始するがこちらは正面に投入したい。剣虎兵部隊を使えばどうにかなるだろう?現状の戦力で何とかしてくれ」
 
「閣下、我々の目標は敵部隊を叩く事でしょうか?それとも敵部隊を追い返すことでしょうか?」
――騎兵聯隊が中核とするなら足の遅い重砲はもっていない。火力優勢を利用して牽制に徹すれば消耗を避けた上で勝利することが出来る。
早々
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