高校2年
第十九話 事情
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ブあんま投げたがらんけど、案外緩急ついててええ球なんよなぁ。)
試合が再開しての、仕切り直しの一球。
マウンド上の新田は、注文通りのカーブを投じる。
ザッ
187cmの鷹合の巨体が、その緩い球に対して強く踏み込んでいく。長い腕をいっぱいに伸ばして逃げていくボールを捉え、背筋を大きくしならせるようにしてバットを振り上げた。
カーーーン!!
甲高い打球音が響く。
新田は目を見開いて打球の方向を目で追った。
この日の風はライトからレフト。
低めのボールゾーンをすくい上げた大飛球が風に乗り、大きくスライスしながらレフトポールを直撃した。
(……いやいやいやいや)
川道は捕手のポジションに両膝をついて、レフトポールの方向を見つめるだけ。
打った鷹合は大きな叫び声を上げてダイヤモンドを一周する。三龍の応援席はボルテージが最高潮、踊れや騒げの大狂乱である。
(7番があの低めを逆方向にカチこむってか。さすがにこれは想定の範囲外やで)
4番林のタイムリー、6番宮園のタイムリー、そしてトドメはこの7番鷹合のホームラン。
水面地区私学御三家の一角、水面海洋相手に、三龍打線は初回でいきなり5点のリードを奪ってみせた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
<水面海洋高校、選手の交代をお知らせ致します。8番ピッチャー新田君に代わりまして、城ヶ島君。8番、ピッチャー城ヶ島君。>
結局、海洋の3年生エース・新田は初回すら保たずにKO。ベンチに帰ってきた新田に対して、闘将・高地監督の物凄い怒号が響き渡る。およそ公式戦とは思えないほどの怒られっぷりに、内野席の観客も騒然となる。
代わりにマウンドに上がったのは、投手としては中肉中背の右投手。背番号11の2年生、城ヶ島直亮だった。コンパクトで小綺麗な投球フォームをしていて、この緊急登板にも実に落ち着いた表情をしていた。
「いてっ」
「このアホが。適当にリードし過ぎやけ。」
投球練習を終えてから、サインの打ち合わせにマウンドにやってきた川道の頭を、城ヶ島はグラブではたいた。どうやら城ヶ島は、川道が内心で何を考えていたのかお見通しらしい。
「新田がタコられよったんは痛快やけど、あんまり早よ負けると夏休みの練習エグいけん。まだ負けるには早過ぎるわい。」
「あ、確かに。むしろアレやな、これまでホンマ糞やった分、この夏くらいは俺らに貢献してもらわなアカンな。」
「ほうよ。ま、新田がジジイにくそキレられよったんはマジ嬉しすぎたけどな。」
「へへへ。じゃ、こっからはガチるで。」
城ヶ島も川道も、グラブで口元を隠しながらヒソヒソと先輩への毒を吐きまくる。
どうやらこの2人、かなり意気投合しているようだ。
川道が捕手のポジシ
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