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打球は快音響かせて
高校2年
第十九話 事情
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にバレてしまうのは致し方の無い所だ。

出場停止。
春の訪れを待たずして部内暴力は摘発され、水面海洋野球部はその長い歴史の中で何度目かの大会出場停止処分を受けた。

(あーあ、やっぱこいつらアホやなぁ)

しばらく野球が出来なくなるという事に対しての反応は、川道としてはこんなものだった。
どうせ無くなるのは「先輩らの春大会」だ。
自分達の進学に多少マイナスはあるかもしれないが、それも問題が個人化されやすい最近であれば、むしろ被害者の自分達には同情の視線が送られてもおかしくはない。しかし、本気でショックだった事があった。

「え?何で山名さん、荷物をまとめていらっしゃるんですか?」
「……退学。俺もちょっとは殴ってもーたからな。まぁ、自業自得だわ。」

寮の相部屋の先輩が問題が明るみになってすぐ、荷物をまとめていた。この先輩は、一つ上の先輩の中では良心的な方で、後輩をパシリに使うにしても、後輩の都合によっては断る事を許してくれる人だった。洗い物も、あまりに川道が忙しそうだと、自分でやってくれるような人だった。

「えぇ?山名さんまで退学なんですか!?嘘ですよね!?それじゃあ先輩方は…」
「末広や新田、だいたいレギュラーの連中は残るで。まぁ、クビになんのは半分くらい、俺みたいにベンチにも入れんような雑魚がほとんどやな。」
「…………」

川道は絶句した。末広や新田はレギュラーでもあるが、それと同時に、先輩方の中でも有数のシバキ屋、暴君でもあった。

トカゲの尻尾切り。川道の頭にはそんな言葉が浮かんできた。問題を起こした先輩方の中でも、試合に使えそうな奴は守り、例え山名さんのような優しい人であろうとも、使えなさそうな奴には責任を押し付けて辞めさせる。

「ま、俺は地元に帰って鳶でも土方でもやるわ。体だけは頑丈やけな。川道、お前頑張れよ。甲子園行けよ。応援してるけ。」

山名さんはそう言って笑みを見せ、部屋を出て行った。後に残ったのは、ボロボロと涙を流す川道ただ1人だった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



(……俺ら下級生をイビるんはまだしも、こいつらは自分の同級生、仲間すらも身代わりにしてのうのうと野球しよるクズや。どうせ今も、この夏何としても勝たんかったら推薦がもらえへんとか何とか思うてんのやろ。)

川道は内心で毒を吐きながら、左打席に入った鷹合を見上げる。

(ま、ここはボチボチ切っておかなアカンな。さすがにこのままやと、俺のせいで打たれてもてる事がバレてまうわ。まぁ、打たれそうなリードで素直に打たれてまう新田さんの球がショボいんやけど。)

川道はこの試合初めて、真面目にリードを考えた。初球はアウトコースに逃げて行くカーブのサインを出す。

(新田さんはこのカー
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