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打球は快音響かせて
高校2年
第十九話 事情
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ドへ集まった。

「おい!何やっちょんやバッテリー!」

タイムをかけたのは主将の3年生・末広だった。
「ケンカ野球」水面海洋の主将だけあって、その顔は分かり易い強面で、そして今はその強面が憤っていた。

「ポンポン不用意に真っ直ぐ投げよって、バカかお前ら!せいぜい130の真っ直ぐしか放れん癖に調子こくなボケ!」
「はい!申し訳ございません!」

投手の新田は不貞腐れたような顔をするが、下級生の川道は末広の言葉に背筋をピンと伸ばして返事をする。その顔には、つい先ほどまでのいやらしい笑みはない。真底深刻な表情があった。

「ええか、3点取られたけど、三龍のエースは球速いだけで球種もないしコントロールもない。3点なら十分返せるわ。慌てんなよ。落ち着いていくぞ。ええかっ!?」
「「「おお!」」」

末広の言葉に内野手がピリッとした返事をして、マウンド上の円陣が解ける。川道は神妙な顔つきのままポジションに戻ってマスクをかぶった。

(……球速いだけのピッチャーにどん詰まったのはどこの誰やねん。兄貴もバカやさけ、適当な事しか言わんわ〜)

マスクをかぶった瞬間に、口元には嫌らしい笑みが戻る。もちろん、先輩に笑っているのを感づかれないように、口元以外でしか笑わない。
川道は自軍応援席に目をやる。
ベンチ外の部員は、例年より少し減っていた。
川道の脳裏には、昨年の冬の事がよぎっていた。



ーーーーーーーーーーーーーーー



昨秋、海洋は水面地区の準決勝で帝王大水面にコールド負けした。何とか東豊緑大会には出場したが、そこでは初戦で瑠音地区の美久里高校によもやまさかの敗退。瑠音地区という田舎の公立校に負けてセンバツを逃した事に高地監督はガチ切れて、厳しい冬の練習が始まった。

「おい、1年!オノレら最近ヌルいんやなかか!?そういう雰囲気あるから負けるんだろがぁ!」
「はい!申し訳ございません!」

川道の一つ上の代は、センバツを逃すだけあって野球の実力は大した事はなかったが、しかしその分だけシバキに関しては積極的で、よくよく川道らはボコされていた。

「くそったれが!お前一体何やらかいてくれとんやアホ!もう堪忍ならへん………わ!?」
「あーあ」
「さすがにこいつぁヤバいやろ」
「おい、立てるか?おい」

先輩からの連帯責任なシバキの原因を作った奴は、同級生からも狩られる羽目になるのが恒例だったが、倒れている姿を見た瞬間怒りを忘れてこれ以上殴るのを躊躇ってしまうほど、こっぴどくやられるケースが増えていた。別に川道達が優しいという訳ではない。DQN根性が染み付いているはずの連中ですら躊躇ってしまうほど、先輩からのシバキが苛烈だったのである。

そしてそんな度の過ぎた事をしていれば、大人達
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