高校2年
第十九話 事情
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第十九話
カコッ
「ファースト!」
一回の裏、早くも4番打者・林のタイムリーで一点を先制した三龍打線。
なおも続く一死一、二塁のチャンスで、監督の乙黒は5番の飾磨に送りバントを命じた。
鈍重な見た目をしているが、結構飾磨は器用な打者である。しっかり三塁側にバントして、二死二、三塁の状況を作った。
(……ツーアウトにしてでも、俺の前でチャンスを広げた…)
ネクストから打席に向かう途中、宮園はフッと笑いを漏らした。
(いや、ゲッツーで流れを切りたくなかっただけか。じっくり攻めたかったんだろうな。)
<6番キャッチャー宮園君>
本人はやたらとネガティブだが、宮園の打撃は5番の飾磨に勝るとも劣らない力がある。捕手の守備負担を考慮して6番を打つが、チーム有数の打者である事は間違いない。十分チャンスを託すに足る打者だ。
「せっかく勢いあんのに、勿体無い事するやん、おたくら」
打席に入ると、捕手の川道がすかさず話しかけてくる。宮園は、これまた軽い調子で答えた。
「5番が足おせぇんでな、よくゲッツー食らうんだよ」
「おいおい、ゲッツーにビビってたら点取られへんで?ククク」
「さぁ?俺が打てば入るだろ?」
話しながら川道が投手にサインを送り、宮園がバットを構える。投手がセットポジションに入り、
初球を投じる。
「!!」
「ボール!」
右打者のアウトコースにすっぽ抜けたストレートが投じられ、川道が腕をいっぱいに伸ばして捕球する。バント以外では全くアウトがとれていないこの投手は、まだ立ち直っていないようだ。
「あーあ、真っ直ぐにこだわる割にはさっぱりストライク入れてくれへんわ」
「ふん、よくある事だな。調子の悪い投手をリードするのも役目だろ」
「お、ええ事言うやん」
ほやけど…。
マスクの内側で、川道は小さくつぶやく。
頬のこけた顔に浮かんだ笑みが、マスクによって上手い具合に隠されていた。
(こいつの面倒を見る気は、今日の俺にはありまへーん!)
カーン!
宮園はバットを一閃。
打球は左中間を転々とし、三塁ランナーの渡辺、二塁ランナーの林がホームへと帰ってくる。
打った宮園は二塁に悠々到達。
この回3点目となる、宮園のタイムリーツーベースだ。
「…………」
三龍応援席の大歓声に晒されて、マウンド上に立ち尽くすピッチャーは悔しがる余裕も無く、目が泳いでいる。
(昨日の3発のパンチ、キッチリ3点でお返ししたりましたよ、新田さん)
“女房役”の川道は、亭主の乱調を全く意に介していなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「タイム!」
初回の3失点にたまらず三塁手がタイムをかけ、内野手がマウン
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