生命の木
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ナが答えた。人と食事をするのも好きでない緑川は、この言葉がとても暖かく胸にしみるのを不思議だと思った。用意してくれた紅茶を飲みながら、緑川はズザンナが話すままに、よく耳を傾けた。友達の悪口など一言もなかった。疲れて見えるのはなぜかと聞くと、たくさん出た宿題を昨晩全部してしまったのであまり寝ていないのだと言った。それでも朝は起きてお祈りをしたのだと言う。
まだ九時過ぎだった。二人はトランプをしたり、クイズなどをしていたが、緑川の方は不安になって、長くいてもいいのかと尋ねた。ズザンナは、緑川に用がないならずっといても構わないと答えた。この分け隔てのないズザンナの態度が緑川には恐れ多かった。もったいないとか、かたじけないとかいう昔の言葉が分かった気がした。やはり早く帰ろうと緑川は思った。しかし、食事を一緒に作るのに承諾してしまったことが胸にかかり、昼までは帰るべきではあるまいとも考えた。
特に話すこともなくなった二人はそれぞれに本を読み始めた。本棚のポーランド語やエスペラントの本が珍しくて緑川は飽きなかった。ズザンナは推理小説らしい子供の本をベッドに寝転がって読んでいたが、次に緑川が見たときには寝息を立てていた。寝不足の子を起こすわけにもいかない。この章を読んだら帰ろうと緑川は決めた。
立ち上がるとき、下腹部の痛みを緑川は強く感じた。まだ例の少女の下着を穿いたままだったのである。これを思い出すと同時に、ある不安が緑川の胸によぎった。鍵のかかっていないアパートに、眠った子供を一人残していいのだろうか。ドアに手をかけたところで、それが論理的な説得力を伴って緑川に確かなものとなった。緑川は、あまり満足でない感覚を抱きつつも、ズザンナの部屋へ戻った。そして緑川は息を飲んだ。
何度か寝返りを打ったズザンナの長いスカートが腰の上までまくれていた。ズザンナは快活な少女なのに違いない。緑川に背を向け、右腕は頭の方に伸ばしていた。両脚は折り曲げていた。
緑川は近寄ってみた。そして、ズザンナの白いはずの下着に、ちょうどそのシャツの色よりは暗いいびつな黄色を見つけた。きのうから服を替えていないのだと緑川は思った。いまの緑川にとって、目の前にあるのはただの綺麗な少女の体だった。緑川はその黄色に発作的に鼻を当てて深く息を吸い込んだ。かき分けるように鼻を沈めた。まだ小さな女の形が口元に細かく辿られた。鼻を後ろにゆっくり動かしていくとにおいも変わっていった。
膝で立っている緑川は、顔を離してズザンナの体を上から眺めた。頭に伸ばした腕の付け根に、半袖のシャツから金色っぽい毛が見えた。そこにも緑川は鼻を付けた。あの少女と同じきついにおいが緑川の脳天を突いた。くすぐったかったのか、ズザンナは緑川の頭を両腕で抱きしめ、体を上に向けた。その腕をやわらかくほどくとき、緑川はズザ
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