暁 〜小説投稿サイト〜
生命の木〜少女愛者の苦悩
生命の木
[9/23]

[1] [9] 最後 最初
の、惜しい気がしてそうできず、いつもの所へ放っておいた。少女の髪もたくさん抜けて落ちていた。残っている酔いからくる気分の悪さも手伝って、少女のにおいに食傷気味になっていたが、その髪を一本一本丁寧に拾い集めた。
 したことの記憶がないとは一体どういう心の働きだろうか。それよりも、酒を飲んでいるとき、自分の行為をまともだと思っているのに、覚めてみると明らかに狂っているのはなぜなのだろうか。
 ふと会社のことが気になった。しかし、確かに連絡したのを思い出して、緑川はシャワーを浴びに行った。自分の下着を脱いだとき、そこに少女の跡を見つけた。男にはない色だった。それを眺めつつ、少女は緑川のしたことに気づいているのだろうかと疑った。置き手紙にも、なんの非難の言葉もない。「今度」と先のことまで書いてある。少女の腰はまだ狭く、女の重さを備えていない。少女にふさわしい行為であるはずがなかった。
 体を拭いた緑川は、そのまま部屋を掃除し、少女のものは全てごみ袋にまとめ、口を縛った。それから、少しフランス語の本を読んだのだが、結局ワインの栓を開け、休みを文字通り休むことにした。

 翌日、もはや何ともなく健康な朝を迎えた緑川は、「あすは必ず行くけれども大事をとって」もう一日会社を休んだ。
 少女は今晩の電車に乗ってくるだろうか。そもそも、少女はどこへ行っていてあの時間に乗ってくるのか。緑川はしらふで少女と話したことがなかったから、実際には何をしていても思い出しか残っていないのだった。確かにあるのは少女の汚れた服やいろいろな残り香だ。いつも持ち歩いている少女の下着も、全てほとんどにおわなくなってしまった。緑川は思い立ち、少女の下着を穿いてみた。不快に締め付けられて吐き気を催しそうになった。
 天気がいいので表を少し歩こうと思った緑川がドアを開けて出たとたん、ズザンナが目に入った。ズザンナは自分の部屋のドアの両側にある植木鉢に水をやっていた。薄黄色の半袖のシャツに真っ白な長いスカートをはき、はだしのサンダル姿をしたズザンナは爽やかながら、その顔に疲れがあった。挨拶のあと、今日は創立記念日でお休みなのと自分で言い、どうぞとドアを開けてにっこりと緑川を招いた。この「どうぞ」が唐突だったので緑川は面食らった。しかし、散歩の方を優先させる理由など、もちろん無いに決まっていた。
 ズザンナの部屋は赤やオレンジの小物が多く、明るい女の子らしい部屋だと緑川は思った。ポスターの類がない代わりに、十字架が壁にかかっていた。机の上にも聖家族の絵があった。暗く陰気な感じのする自分の部屋とはなんて違うのだろうと緑川は感嘆した。そして女の「善さ」を予感しもした。
 ズザンナの両親は共働きなので、今日はズザンナだけであった。食事はどうするのかと緑川は聞いてみた。一緒に作って食べませんかとズザン
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ