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生命の木〜少女愛者の苦悩
生命の木
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せたが、起きなかった。 
 電車は終点に行き着いた。緑川は少女を起こそうとしたけれども、少女は起きなかった。肩に手をかけて、外に連れ、仕方ないので緑川はタクシーを使って少女を自宅に運んでいった。警察へ連れて行くという考えは、不思議にも思い浮かびさえしなかった。
 少女は体じゅう熱を帯びていた。濡れた服を替えてやるあいだに、緑川は泥酔した頭で積年の思いを遂げ、そのまま眠ってしまった。

 緑川が目を覚ましたのは朝の六時頃だった。まだ早いと思ってまた目を閉じた。外は晴れか曇りらしく、雨音はしていない。きのう抱いた二人の女との会話を思い出し、触れた左手の指を、まどろんだまま緑川は口に当ててみた。それが新鮮に強くにおったとき、緑川は少女のことを初めて思い出した。頭痛と酔いの残っているはっきりしない意識で、緑川は少女のいないことと、その衣服が布団の横に置いてあることとを知った。少女を裸にした、その先が思い出せなかった。最後には布団に入れて眠ったはずだった。
 緑川は体を起こした。卓袱台に紙切れがあり、それに、ありがとうございました、服を借りていきますと書いてあった。名前も住所もなかった。そうしてみると、少女は帰ったのだ。緑川は念のため、投げてあった財布を調べてみたが、金はなくなっていなかった。尤も、盗られていても構わないと思うのだった。押し入れのティーシャツと短パンとが一つなくなっていたから、それを着ていったのに違いない。布団の横の少女の服は、靴下からスカート、下着、全てあった。髪飾りまであった。
 携帯電話が転がっていた。出した記憶は何もなかった。緑川は中を確認して驚いた。実に百枚以上、昨晩の緑川の奇行と痴態とが記録されていたのである。少女の体のありとあらゆる部分、例えばつむじや爪の一つ一つまでが執拗に写され、後半が動画になっていた。
 緑川は自分を悪魔だと思った。激しい恐怖が襲い、犯罪者に成り下がった自分におののいた。冷蔵庫に走ってビールを開けると一気に飲んだ。一体、自分はどうなるのか。緑川は少女の服をまとめてごみ袋に入れた。そのとき落ちた下着を見た。緑がかったような薄茶色に汚れていて、焦げ茶色の染みもあった。緑川はそれを手に取り、鼻に当て、それから丸めてごみ袋に投げ込んだ。ごみ袋は押し入れに放り、戸を閉めた。
 ビールを数缶飲んだ緑川は、苦しい眠りに落ちていった。

 呼び鈴が鳴った。目を覚ました緑川は、回覧板ですとの内容に応じる気はまるでなかったが、それが声でズザンナだと分かると、吸い寄せられるように出ていった。
 戸が開いて緑川を見たズザンナははっとした。下着姿の緑川のトランクスの前が高く盛り上がっていた。ズザンナは首まで真っ赤になった。しかし、緑川の様子がおかしいことに気づいたズザンナは、気持ちをそこに向けるまいと心に決めた。
「お
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