生命の木
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を被って着た。
レナータは、緑川のこの少女に対する態度が、子供に接するのと少し違うことを感じた。この人誰と聞くと、おとなりさんだと答えられた。
「ズザンナです。中一です。お友達になりましょう。」
とズザンナが握手を求めた。レナータは
「レナータです。五年生。」
とその手を握った。
「おじさん、みんなでまずお祈りしましょう。」
とズザンナが言った。そしてズザンナはカトリックの祈りを、緑川は十句観音経を唱えた。レナータは黙ってそのあいだ手を合わせていた。祈りのあとは厄が落ちたように気分が明るかった。
そのあと三人で夕食を摂ったが、食事はズザンナが頼んで母親に持ってきてもらった。三人はトランプをし、すごろくをし、またたくさん歌った。九時頃、緑川とズザンナに降車駅まで送られてレナータは帰っていった。
帰り道、緑川は先日の手紙のことを取り消そうとズザンナに持ちかけた。しかしズザンナは、心配せずに今は何も決めないでおきましょうと言い、きっと神様がいいようにしてくださいますと笑顔で加えた。
翌朝早く八時過ぎにレナータは現れた。緑川ははっきりした頭でレナータを迎えた。抱きしめるだけに留め、緑川は新しい本をレナータに与えた。緑川はなぜか心身ともに非常な疲れを感じていた。
おじさん、駄目だよとレナータは言い、スカートのホックを外して緑川を抱きしめた。緑川は、いつでもこの子を抱けることを心に感じて楽になった。レナータは積極的にそれを証明してみせた。
九時過ぎに呼び鈴が鳴った。ズザンナの声を聞いたレナータがドアを開けた。緑川は疲れた体で寝ていたが、二人は緑川を起こして、皆で礼拝に行った。
礼拝が終わって帰ってくると、レナータはズザンナの家に呼ばれていった。事情を察しているズザンナは、緑川には、あとで行くから安心して眠ってくださいと伝えてあった。その言葉通り緑川は眠りこけた。
ズザンナの家では、レナータをめぐっての話し合いが進められていた。真面目なカトリック信者の両親は、レナータの母の、親としての立場を尊重しつつも、とりあえずは児童相談所に行くことを提案した。レナータに異存は何もなかった。更に、裁判に持ち込むことも辞さないつもりでレナータの側に立とうと言った。実業家の藤原には、緑川にはまるでない胆力があった。考えるだけで実行の伴わない緑川と違い、その言葉は豊かな経験と自信とに裏打ちされた威厳に満ちていた。ただお母さんのためによく祈ってあげなさいとズザンナの両親はレナータに伝え、藤原は家族でまずそれを行ってみせた。
レナータは、ここに自分はいてもいいのだと肌で感じた。しかし、緑川を放っておけなく思われ、おじさんが心配だから行ってみますと隣の部屋へ戻っていった。
ズザンナの両親は、緑川さんは動物や子供に好かれてちょっと聖フランチェス
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