暁 〜小説投稿サイト〜
生命の木〜少女愛者の苦悩
生命の木
[13/23]

[1] [9] 最後 最初
酒を飲まなかったとして、緑川があの少女に今より良いことでもしてやれたのか。何もできず、関係さえ生まれなかったに違いない。そして少女の境遇はそのままだ。出会わない方が良かったとは、他人事の発言である。緑川は、すっきりと納得のいかぬ複雑な気分だった。少女の親がこれを知ったら自分は犯罪者として捕まるだろう。ただしその時には親を告訴して、少女を幾分か救うこともできるかもしれない。それも少女の方から翻って、緑川を訴えに出たなら何にもならない。そしてそういうことは、世間を見ても充分ありうることだった。
 ワインを開けた緑川は、これまでに少女が残していった物を並べてみた。普通、女の子にとっては汚物であるそれらの品々が、光彩を放って緑川の男の欠損に改めて刺激を与えた。これを手放せる自信が緑川にはなかった。ズザンナに同じものを求めるずぼらさもまた、自分にないだろうし、あってはならないと思った。だからこの「汚物」は自分の一部にとって宝であり、少女はその金の卵を産む鶏ですらあると緑川は捉えざるを得なかった。
 本当はこんなものより、少女本人を求めて良いはずであったが、その時の記憶のない緑川であってみれば、どうにも致し方がないことだった。
 ズザンナに渡す手紙はもう出来ていた。酔った緑川は、夜中にそれをとなりのポストに入れてしまった。それからインターネットのサイトを閲覧した。緑川は座ったまま、それらのサイトの夢を見ていた。

 ズザンナに宛てた手紙と休日という意識があったからだろう。呼び鈴が鳴ったとき緑川は、日曜礼拝へのズザンナの誘いだと思って、慌てて起きて戸を開けた。立っていたのは少女だった。約束の土曜日だった。
 一瞬混乱した緑川が起き抜けなのを見て取って、少女はにこっとほほえんだ。そして自分から部屋に上がってきた。少女の手提げにはワインが二本入っていた。
 緑川の部屋には、きのうのまま少女の汚れた服が並んでいた。少女はそれを見ても全く驚かなかった。それどころか、その場で着ているものをどんどん脱ぎだした。オレンジ色のカチューシャはつけたまま、裸の少女は立っている緑川に近づき、緑川に抱きついた。少女の茶色の髪が油でつややかだった。少女は横になった。そして、おじさんの言ったとおり、あれからお風呂に入らなかったよと言った。やはり記憶にはない言葉だった。
 少女は膝を立てて緑川を導いた。嗅いでと言ったが、緑川は少女を抱え、膝に抱いた。立ちのぼる強いにおいに温かく包まれた緑川は、少女の僅かに開いた唇に顔を近づけた。その唇がそれたと思ったら、少女が左耳に噛み付いた。あっと叫んで緑川は身を引いた。少女は、真面目なおじさんは怖いから嫌だと耳元で言い、立ち上がるとワインを一本開けて、瓶を口につけ飲んだ。緑川のところへ戻った少女は、また飲んだかと思われたが、今度は口を緑川の口に当て
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ