彼らの名は
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た徐晃隊が副長を迎え入れるように道を切り開いていた為に。
ギリと悔しさに歯を噛みしめて、文醜は並み居る自身の部下達を押しのけながら先頭に飛び出す。
突きだされる剣と槍を弾き返しながら漸く、綺麗に列を為す徐晃隊の隙間から異質なモノが目に入った。
橋の最後方で煙が立っている。その下では小さな赤い火が揺らめいている。ゆらゆら、ゆらゆらと静かに、不気味に。
異質な突撃や異様な死に様なら許容出来た文醜でも、あまりに異常なその行動は理解出来なかった。名を残すように、自分の存在理由を証明するように戦う姿は理解出来る。だが、既に己が兵士達に出口を塞がれて、ただ命を投げ捨てるが如きその姿は彼女の理解の範疇を超えていた。
「お……お前らバカなのか!? 橋の上にいるって事は……このままじゃ落ちるんだぞ!? 名が惜しくないのかよ!? 戦って死のうとは、思わないのかよっ!」
悲痛な叫びを投げながら、徐晃隊の者達にどうにか攻撃を当てようと武器を振るい続けた。狭い範囲でも器用に振るわれる重量武器ではあるが、徐晃隊にとっては利用しやすかった。二人、ないしは三人が剣で攻撃をいなし、橋に叩きつける様に促し続ける。それによって一撃ずつ、橋の木が抉れて軋んで行く。
彼女は徐晃隊と短い戦闘を行い、その姿に敬意を持っていた。
死を恐れず、前へ前へと歩みを進め、一人でも多くを屠っていくその姿は武人のそれと同じ。心は自分と同じなのだと感じていた為に。
「バカが! 俺達にとっては名も命も別もんなんだよ! 俺達は徐晃隊! 黒麒麟の身体だ! 御大将が俺達の名! 御大将こそが俺達の命! 俺達の名も命も御大将のもんなんだ! だから……てめぇら一人だって此処を渡らせてやらねぇ!」
副長の嘲りを含んだ声が響く。
誰かに理解して欲しいなどとは思わない。ただ彼の為に、彼に想いを繋いで貰う為に……彼らの想いは彼と共に。懐かしき幽州で既に誓いを立てている。
彼らの姿に、敵の誰しもが圧された。力量で測れるモノでは無く、覚悟の差が違い過ぎた。
徐晃隊は一度入れば例え新規の兵であろうとも、一人の例外無く地獄に身を沈めて、想いの華を咲かせてするりと命を散らし、ただ与えられた命を遂行していく。
ゴクリと生唾を呑み込んだ文醜はその在り方に恐怖する……同時にナニカが胸に湧いて出てきた。
抗い難い激情のような奔流は心を染め上げて行き、ふと、誰かの姿に重なった。
たった一人を助ける為に動き続ける新しく出来た友達こそが、それと同じであったのだ。
「ああ、そうか。お前らはあいつと同じなんだな。誰かに犬死にと言われても違うんだ。大切なモノだけ守れたらそれでいい。ははっ、あたいは……姫と斗詩の為にお前らみたいになりてぇな」
誰かを守る為の姿は誇り高く、彼女はそれに
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