彼らの名は
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、副長を見やったはずが、その後方に位置する橋に目を向け、文醜は驚愕に染まる。
その先では、手すりの低い橋から外れて落ちて行く騎馬隊達がいた。
より狭い橋の上では方向転換も出来ず、徐晃隊にとってはいい的であったのだ。膨大な敵の群れに対しても恐れず突撃を仕掛ける徐晃隊が、たかが馬の突撃くらいに怯える事があろうか。
副長の狙いは文醜ただ一人。まさしく、捨て奸の一番の成果である敵指揮官の足止めを達成したと言ってよかった。
「ああもう! 馬じゃ抜けらんねぇのか! 後続は馬から降りろ! 殲滅に変更だ! こいつはちょっと強そうだからあたいが相手してやらぁ!」
まだ速度を上げていなかった後続のモノ達はその命に従い、速度を緩めて馬から降りて行く。
それを見て、すらりと、腰に据えていた二つの中型剣を抜き放ち、副長は文醜に指し示す。
「俺の名は周倉。御大将と想いを共有する徐晃隊副長にして黒麒麟が片腕なり。てめぇは袁紹軍が看板の片割れ文醜だな。片腕同士が相対してるってのは面白れぇな」
「お前っ……最っ高だな! 男のくせにあたいと一騎打ちするつもりか!? 敵じゃ無かったら友達になりたかったぜ! 戦じゃ仕方ないなぁ……剣で語り合うしかないし」
キラキラと宝物を見つけたような瞳ではしゃぐ文醜の様子に苦笑しながら、副長は片方を肩に担いで構えた。
文醜も、中段に大剣を構えて、
「ふっふっふー、いざ、尋常に勝負っ」
言うや彼の元に飛び出した。否、飛び出そうとした。
「おっと、勘違いすんじゃねぇぞ? 俺は武人じゃねぇんだ。そう……俺はな、徐晃隊の、副長なんだよ!」
突然言葉を向けられて数瞬、再度文醜の顔は驚愕に染まる。
副長は、言葉を残して文醜に背を向けたのだ。ポカンと口を開けて、彼女は茫然とその背を見送ってしまった。
彼が向かう先は橋の上、続々と群がっていく袁紹軍の背後を双剣で切り裂きながら進んで行く。
一騎打ちとなっているはずであったというのに、突然背後から奇襲を仕掛けられた事で袁紹軍のモノ達は混乱に呑み込まれた。多くの絶叫に振り向き始める敵、その隙を逃す徐晃隊では無く、最前列から順に攻撃主体の連携連撃を繰り広げて押し返していった。
「うっわ、ずっりぃ! そんなの在りかよ! 逃げんな周倉!」
堪らず叫んだ。武人としては許せない行動であったのだから当然。曖昧な始まりだとしても一騎打ちとなった場を放棄されるなど、文醜にとっては初めての事であった。
しかし彼女が次の行動に移るのは早かった。すぐさま地を蹴り、副長の背を追っていた。部下達に指示を怒鳴りながら。
「バカ野郎! そいつを抜けさすなよ! 橋のやつらと合流させるな!」
その命は為される事は無かった。既に橋から攻勢に移ってい
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