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ニヒリズム
第三章

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第三章

「僕はね」
「おやおや、生き残ったかい」
「君はタスカーに囚われたままか」
「そうだよ。幸か不幸かね」
 そうなったと言う。そしてだった。
「残るは五つ」
「その五つの中に銃弾が入っている」
「死神、そしてタスカーの解放者」
「彼がそこにいつね」
「そうだよ。そこにね」 
 伯爵も友人達も話していってだ。そうしてだ。
 次の人間が拳銃を手にして引き金を引いた。その彼も生き残った。
 彼もだ。冷や汗と共にだ。笑って言うのだった。
「いやいや、これはね」
「スリルがあるかい?」
「退屈しないんだね」
「そんなの吹き飛ぶよ」
 そうなるというのだ。
「いや、本当にね」
「へえ、そんなにいいのか」
「スリルが吹き飛ぶかい」
「そうなるんだね」
「そうだよ。なったよ」
 まさにそうなったとだ。彼もまた話す。
「いや、本当にね」
「じゃあ次は僕だね」
 次の順番の彼がだ。卓に置かれた拳銃を受け取りだ。彼もまた引き金を引いた。
 しかし彼も生き残った。引き金の硬い金属音だけであった。
 拳銃を置いてだ。彼も言う。
「いやいや、これはいいねえ」
「スリルだね」
「それがあってだね」
「うん、四発のうちの一発だったけれど」
 それでもだったのだ。彼はだ。
「よかったよ。生きられたよ」
「おや、君は死にたくなかったのかい?」
「タスカーから解放されたくなかったのかい」
「解放されたくはあったよ」
 それは事実だとだ。彼は言う。
「けれど生きていることはね」
「それはいいんだね」
「間違いなく」
「うん、よかったよ」
 こう話すのだった。彼はだ。
「このスリルがね」
「そんなにいいんだったら僕もしよう」
 四人目だった。彼は拳銃を手にして言った。
「さて、残るは三発だね」
「そう、その三発のうちの一発だよ」
 伯爵は楽しそうに笑ってだ。その友人に述べた。
「君が解放される可能性は三分の一だよ」
「それは高いかな。低いかな」
「さて。それはわからないけれど」
「当たれば」
 それでだった。その三発のうちの一発に当たればだ。
「僕は解放されるね」
「さあ、解放されるかどうか」
「今確かにするよ」
 こう話してだった。彼も引き金を引いた。今回もだった。
 ただ金属音だけが響いた。それだけだった。彼もまた言うのだった。
「いや、一瞬だけれどね」
「その一瞬がだね」
「凄いんだよね」
「そう、生きるか死ぬか」
 シェークスピア的にだ。彼は言ったのである。
「そういうのを極限まで味わったよ」
「そうそう、このルーレットはね」
「そうしたものだよ」
 生き残った面々がここで言う。

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