第三話 セカイには2人ぼっち
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GWを過ぎた天鴎高校の女子寮は以前の賑わいを取り戻しつつあった。
短い休みを利用して帰省した者も多い中、ゆりと親友である和泉だけがそれを見送った。
二人には親と呼べる人間は存在しない。
……いや、この世界には、と言った方が正しいだろうか。
「また二人だけになったな」
肩にぽんと手を乗せると、そのまま背後から抱きしめられる。
彼女はいつだって優しい。
自分が悲しみに耐えているのを知っていて、こうして決して独りではない事を無言で教えてくれる。
それにいつも甘えてしまう自分がひどく子供に思えて嫌になる。
尤も、和泉にとってはそれが愛情表現の一つだと言うことも解っている。
寮母さんも帰省してしまったため、本当に二人だけになってしまった寮はやけに広く感じた。
天鴎高校は町からかなり離れた丘の上に建設された進学校で、卒業生の中には有名大学に進んだ者も数多くいるらしいが、二人にとってはどうでも良かった。
全ての寮生を送り出した後、夕飯の買出しに駅前のスーパーに出掛けて帰ってくる頃にはとっくに二十時を回っていた。
何せ年頃の少女二人も揃っているのだ、それだけで済むはずがなく、せっかくのGWとのこともあり、普段はなかなか足を延ばさないショッピングモールに繰り出し、流行のファッションをチェックしてから遅めの昼食を摂り、書店で何冊か漁っているとあっという間に時間は過ぎてしまう。
おまけに天鴎高校から駅まで片道二時間は掛かり、夕方近くに慌ててバスに乗り込んだとしても着く頃には夜の帳が下りている。
軽く夕飯を食べてきた二人は寮に帰るなり風呂に入り、すぐに各々の自室に篭って横になった。
(……皆、お父さん、お母さんたちと会えたかな?)
さほど騒々しくはないにしろ、ここまで静まり返っているのは久しぶりだ。
僅かに重くなってきた瞼を下ろす瞬間、何かが耳を掠めた気がして目を開ける。
自分の部屋番号は224号室。
彼女の部屋番号は215号室と微妙に近いが、物音が気になるほどの距離でもなければ、室内を隔てている壁が特別薄い訳でもない。
青々と茂る若葉が夜風に弄ばれているだけだと思いはしたが何だか気になり、身なりはそのままで、カーテンで閉ざされている窓をゆっくり開けて地上を見下ろした。
昼間の空気とはまた違い、ひんやりとしていて眠気を孕んだゆりを起こすには充分過ぎた。
―――パシャ!
「っ!まただっ」
何かが軽く音を立てたのと同時に小さく光った。
あれは…。
「カメラの…フラッシュっ!?」
時刻は二十二時四十五分
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