【04】張りつめた拝謁
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「総統閣下。本日は我が邸に行幸いただき、このディッツ、恭悦至極にございます」
「他ならぬ君からの招待だ。ありがたく伺わせてもらったよ。ご令嬢は無事に帰還したと聞いたが」
「おかげさまをもちまして」
「それはよかった」
声が近づく。
「本日は…総統閣下に、目通り願いたい者がおりまして」
「ほぅ…なるほど」
扉が開く。
「彼女が、かね」
「………」
「拝謁賜り、恐悦至極にございます。総統閣下」
青い肌に金色の髪。
視界に入ったのはほんの一瞬。
私はゆっくりと、深く頭を下げた。
「顔を」
想像よりもずっと若々しい声に頭を上げれば、目の前の人物は面白そうに笑っていた。
目、以外が。
「青き肌を持たぬ者、か」
「総統閣下、この者は」
「ザルツ人か…それとも」
「テロンの人間かな」
ディッツが驚きに息を飲んだ。
総統閣下は口元に笑みを浮かべながら、ソファーに腰掛けた。
「驚くことは無い、ディッツ君。幾人かのテロン人を捕虜として連れてきたことは君も知っているはずだが」
「おっしゃる通り、私はテロンの国連宇宙軍に属しております」
「名は」
「結城、里華と申します」
「ユウキ。それで?テロンの人間が私に何の用かな?」
もし今、私の手元に武器があれば。
この男を殺せたなら。
私は引き金を、引けるのだろうか。
人類の、地球の敵に。
「テロンとガミラスの、友好の為に」
「ふ…友好、ね」
「我々は戦火を収める…いえ、収めなければならないのです」
「貴様!総統閣下に向かってなんと言う口の聞き方を!」
怒鳴り声をあげるディッツを、総統閣下が手を上げて制する。
少なくとも、私の言葉に耳を傾けてくれるつもりはあるらしい。
「なぜ、かな。テロンの女性よ」
「なぜなら我々は、同じ祖より別の進化の道を辿った…遠い、兄弟だからです」
そう。これが唯一、導きだせる答え。
我々地球人とガミラス人は、同じ種だった。
それがある時、別れ、それぞれの時を過ごしたのだ。
だから、DNA情報が一致する。
「ディッツ君」
「はっ!」
「タランを呼んでくれたまえ。兄の方を」
「ヴェルテ・タランを、でございますか」
「あぁ」
「ザー・ベルグ」
ディッツは右手を上げ、温室を後にした。
残されたのは、私と総統閣下。そして護衛たち。
「君も掛けたまえ」
「失礼いたします」
総統閣下は優雅にティーカップを傾けている。
私は動くことなど出来ない。
少しでも動けば、必死に押さえている震えがバレてしまうから。
そんな私の姿を、総統閣下がさも楽しそうに眺めていたなど
私は、気付けなかった。
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