第二章
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第二章
「命を賭けるんだよ」
「えっ、命をかい」
「そう、命を賭けるんだよ」
こう話すのだった。
「それで賭けをしないかい?」
「命をねえ」
「退屈なんだよね、今」
「だからタスカーだよ」
塞ぎ込んでいるとだ。また話す伯爵だった。
「だからどうにかしたいんだけれど」
「じゃあここは思い切ってね」
「命を賭けるのかい」
「退屈じゃないだろ、命を賭けるのなら」
「死ねば塞ぎもなくなるしね」
伯爵からだ。こうも言った。
「それじゃあね」
「決まりだね。それじゃあね」
「よし、それじゃあ」
こうしてだった。伯爵に友人達もだ。その命を賭けた遊びをすることになった。それで出されたのは。
拳銃だった。それが卓の上に置かれる。茶色の卓の上に置かれた黒い犬儒はそれだけで何やら重苦しく硬い感じを彼等に見せていた。
その拳銃を見下ろしながらだ。言いだしっぺの友人が言った。
「この拳銃には一発だけ銃弾が入っているんだ」
「一発か」
「六発の装填の中に」
「そう、一発だけだよ」
こう伯爵達に話す。
「銃弾が入っているのはね」
「ああ、わかったよ」
それを聞いてだ。伯爵は納得した顔で述べた。
「その銃弾に当たったら死ぬってことだね」
「そう。一人ずつこめかみに撃っていって」
頭のそこにだというのだ。
「やっていくんだよ。そして当たったら」
「死ぬ」
「確実に」
「どうだい?退屈じゃないだろ」
彼は笑いながら友人達に話す。
「スリルがあるね」
「確かにね。命賭けだよ」
「運が悪ければ死ぬ」
「いや、運がいいんじゃないかな」
ここでこう言ったのは伯爵だった。
「塞ぎ込むこともなくなるし退屈でもなくなるんだからね」
「ははは、そうだね」
「言われてみればそうだよ」
「死ねば退屈もタスカーもなくなる」
「それならね」
友人達も伯爵の言葉に頷きだ。そうしてだった。
彼等はその命賭けのルーレットをはじめた。まずは一人だった。
こめかみに銃弾を当ててだ。友人達に言った。
「じゃあはじめるよ」
「うん、君が当てるかどうか」
「見せてもらうよ」
「これで当たったら終わりだね」
笑いながらだ。彼は言ってだった。
「タスカーから解放されるよ」
「君が解放されるかどうか見せてもらうよ」
「是非ね」
「よし、じゃあ」
こうしてだった。まずは彼が引き金を引いた。それは。
空だった。ただ引き金を引き終えた金属音が部屋の中に響いただけだった。
それが終わってからだ。彼は言うのだった。
「生き残ったよ」
こうだ。冷や汗と共に乾いた笑みで言ったのである。
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