第六十一話 日本シリーズその十四
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「中日は持ち直したけれどその間に阪神がね」
「生まれ変わったからですね」
「それが痛いんですね」
「このことも言うわね」
教師として生徒に話す、とはいっても今話すことは学校の勉強のことでも部活のことでもなく人生のことである、
「こっちが立ち直って強くなってもね」
「相手がそれ以上に立ち直って強くなればですか」
「一緒なんですね」
「強くなったことにはならないんですね」
「そうよ、何でも相対的なものなのよ」
自分だけのことではないというのだ。
「自分がよくなってもね」
「周りがもっとよくなるとですか」
「相手が」
「弱くなったってことなのよ」
それと一緒だというのだ、相手がよりよくなればだ。
「だからね。このことは覚えておいてね」
「何でも相手があるんですね」
「それでその相手がどうかなんですね」
「そうよ」
相手より強くなるかよくなるかだというのだ。
「中日は阪神にそのことで負けてるのよ」
「負けたんじゃないんですか?」
「負けてるのよ」
言葉は過去形ではなかった、現在形だった。先生はここでその現在形の言葉をこうも言い換えたのだった。
「負けている、よ」
「現在進行形ですけれど」
「今ですか」
「今は負けていてもね」
阪神の方が上だ、しかしだというのだ。
「これからはね」
「わからない、ですか」
「そういうことですか」
「未来は変わるわよ」
先生はこのことも言うのだった、自分の生徒達に。
「自分の努力次第でね」
「それで相手次第で、ですね」
「変わるんですね」
「まず阪神が駄目になることは期待しないわ」
それは最初からだ、そうしないというのだ。
「全くね」
「全くですか」
「他力本願にはですね」
「ならないことよ」
そうした期待はしないというのだ、先生は他力本願はするなとだ、生徒達にこのことは強い顔で言ったのである。
「自分がどうかなのよ」
「自分が相手以上に努力するんですね」
「それが大事なんですね」
「必死にね。駄目な奴は何をやっても駄目とかね」
巷でよく言われる言葉も出した、しかしその言葉もだというのだ。
「それは間違いよ」
「駄目じゃないんですね」
「今駄目な人は」
「そういうことを言う人こそ駄目なのよ」
他人の努力を否定する、そうした人間こそだというのだ。
「絶対にね」
「それじゃあですか」
「今は駄目でもですね」
「必死に努力すればですか」
「よくなるんですね」
「努力を否定しないことよ」
自分がやることも他人がやっていることもだ、そのどちらもだというのだ。
「努力しないと何にもならないからね」
「じゃあ野球もですね」
「何でもですね」
「努力からよ。バンドでも勉強でもよ」
ここで学校の生
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