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打球は快音響かせて
高校2年
第十八話 不気味
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。三龍という学校の名の下に集まった少年少女達が、この場を通じて、例え刹那的にでも、一つになっていった。



ーーーーーーーーーーーーーー



打席に入ったのは4番で主将、3年生の林。
組み合わせ抽選で海洋のクジを引いてきてからというもの、同級生にチクチクと嫌味を言われてきた。

(ここで先制しないとマズい…チャンスは初球から、初球から、初球から……)

主将を任されるだけあって、林は生真面目な人だった。そして、秋は帝王大、夏は海洋を引いてくるだけあって、「持ってない」人だった。
そういう人間にとっては、往々にしてチャンスがむしろピンチに感じられる。

パーン!
「ストライク!」
(うわぁああああああ初球は絶対振らなきゃ、振らなきゃ当たらんっちゃのに俺は一体何をして駄目やこれだから駄目なんやうわぁあああ)

林がガチガチに力みすぎて、絶好球の初球のストレートに全く手が出なかった。思い切るべき時に思い切れず、一気にテンパる。

ブン!
「ストライク!」

そして2球目のボール球に手を出してしまう。
失敗の見本のような形で、簡単に追い込まれてしまった。

(…何テンパってんだよ。ランナー無しではよく打つのになー。ホント人としての器が4番じゃないわ。)

ベンチで打席の準備をしながら、宮園が心の内で毒づいた。この少年は先輩相手でも批評の目が容赦ない。

「ボール!」
「ボール!」

しかしここで、海洋バッテリーはアウトコースのはっきり分かるボール球を2球続けた。
それを見ていた宮園は、捕手というポジション柄か、配球に疑問を持った。

(あれ?あれだけテンパってる林さん相手に2球も外すんだ?すぐ決めちゃえば絶対三振すんのに)

心なしか、打席の林の表情に落ち着きが戻ってきていた。林も海洋バッテリーを助けるような追い込まれ方をしていたが、海洋バッテリーも、まるで林を助けるかのような配球をしていないだろうか?

(スクイズ警戒?まさか。スクイズを嫌がるなら、トントンと簡単に追い込んでくるはずがない。初回のピンチでスクイズの一点を嫌がる事もないだろうし。)

宮園が首を傾げているその時、林のバットから快音が鳴り響く。やっと4番本来のスイングが復活し、球足の速いゴロが一、三塁の状況で広く空いた一、二塁間を破っていった。

三塁ランナーが勢い良くホームベースを駆け抜け、プレッシャーから解放された林が一塁ベース上で大きくガッツポーズする。ベンチは主将のタイムリーによる幸先の良いスタートに大喜びし、監督の乙黒は誰よりもはしゃいでいた。
三龍応援席もお祭り騒ぎで、肩を組んで校歌を歌う。

「……あーっくそッ!」

マウンド上の海洋のエースは、いきなり先制点を献上した事に悔しさを露
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