高校2年
第十八話 不気味
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た。2年生ながら海洋の正捕手を担うのは川道悠介。
城都・小金地区のシニア出身の選手だ。
「まぁ三龍さんからしたら、ウチのピッチャーなんて大した事あらへんのやろな〜。恐ろしや恐ろしや〜」
「…………」
渡辺はもう振り向きもしない。
黙って投手に集中する。
戯言に耳を傾けている場合ではない。
そうやって集中を削ぐ事こそが「ささやき戦術」の本質である。
カンッ!
カキッ!
初球を見送り、2球目は高く浮いてボール。3球目、4球目をファウルにして粘るが、渡辺はカウント1-2と追い込まれる。
「ついてくるねぇ。しぶといわ〜早よ三振してや〜」
川道が背後から冷やかしてくるが、そんな事は意に介さない。マウンド上のピッチャーが投げるボールそのものが、予想通り大したボールではなかった。何を言われようと構わない。野球の結果で語るのみ。
カーン!
打球は痛烈なピッチャー返しとなり、ピッチャーが差し出したグラブをすり抜けてセンター前へ。
外野がバックホームに備えた前進守備をとっていた為、2塁ランナーは3塁止まりとなったが、初回いきなりヒット2本で一死一、三塁。
絶好の先制のチャンスが出来上がる。
(…海洋言うたって、同じ高校生や。打てん球やなかし、鷹合のこの調子なら十分抑えられる。勝てるぞ。)
一塁ベース上で手袋を外しながら、渡辺は内心つぶやく。
(頼んますよ、林さん)
ーーーーーーーーーーーーーー
「え?やばくない?」
「海洋ってあの海洋っちゃろ?」
「案外ウチの野球部、強いんやなか?」
三龍応援席では、応援に来た制服姿の生徒からこんな声が聞こえてくる。それもそのはず、相手は地区内最多の甲子園出場回数を誇る強豪。
三龍のようなベスト16辺りでくたばるような中堅校とは役者が違うはずなのだ。当の野球部も、この状況には少々戸惑っている。
「えーと、まだ初回ですけど、チャンテいきます?」
「何でもええけ、早よ次の曲出せや!」
「いや、何でも良くなくないですか?」
「じゃあチャンテ!チャンテ行こ!次いつチャンス来るか分からんけん!」
翼と牧野とがこんな間抜けなやり取りをした後に、「じょいふる」のボードが高く掲げられる。
吹部が手元の楽譜をパラパラとめくり、大急ぎで演奏を開始する。
パパパパパパパラパパー♪
「あ、これじょいふるやなか?」
「ウケる〜」
「さぁ冒険してみな〜い♪」
野球部応援団はもちろん、一般生徒も馴染みの曲に反応し、リズムにノり始める。
勢いが応援席全体に波及していく。
「「「おいっ!おいっ!おいっ!おいっ!」」」
サビの部分で野球部が腿上げ踊りを始めると、真似をする生徒も出てくる。
応援席が揺れる
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