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打球は快音響かせて
高校2年
第十八話 不気味
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野球部がタオルを横に伸ばして左右に揺らす。

「「「き〜〜みぃ〜〜が、居たな〜〜つ〜〜は」」」

しかし、そうしてる内にグランドからは甲高い打球音が響き、白球は内野の頭を越していく。

「ヒットーッ!」

牧野が取り決め通りに叫ぶが、吹奏楽部はイマイチ状況を飲み込めない。あれ?このイントロ止めちゃっていいの?と言わんばかりの、微妙な間ができる。

「ヒット!ファンファーレちょうだい!」

牧野が二回目を言うと、ようやく吹奏楽部がヒットマーチの演奏に切り替えた。

パーパーパッパララパッパラー♪
「「「へいへいっ!」」」

いきなり出た初安打に、ようやく応援席も歓喜を表す。応援も中々、当たり前に行われているようでいて、慣れていないと円滑に出来なかったりするものだ。

「…えーと、次は横島さんだから…」

吹奏楽部だけではなく、応援をリードする側の翼にもそれは言えていた。次が誰で、どの曲だと言うのは、野球部だけの応援ならばわざわざ言わなくてもみんな分かっているが、吹奏楽部と連携せねばならないこの日はそうもいかない。いちいち、曲名を書いたボードを掲げてやらなくてはならない。慌てて2番打者の曲のボードを探し当てた翼は、それを吹奏楽部に見せる。

パパパパパッパラッパラッパーパッ♪
「「「タクト!」」」

「エルクンバンチェロ」の軽快なリズムが流れ始めると同時に、またグランドからは打球音が響いてきた。

「えっ!もう打ったの!?」

一息ついていた翼は、また数あるボードの中から3番打者の曲のボードを慌てて探す羽目になった。



ーーーーーーーーーーーーー



<3番セカンド渡辺君>

ワンアウト2塁。
初回から作った絶好のチャンスで、打席には2年生ながら三龍の3番を任される渡辺が入る。
体は大きくないがそのスイングはシャープで、打撃の信頼感はチーム随一のモノがある。

(柴田さんは初球打ったし、横島さんもファーストストライクを普通にバント決めよったけんな。正直、そんな凄い球投げよるようには見えんな。)

海洋の先発マウンドは、戦前の予想通り左投げの3年生エース。1回戦は先発するも3回でお役御免、2回戦はまるで調整かのように最終回だけの登板。満を持してシード校である三龍相手に送り込まれたようである。だが、渡辺の目にはそれほど脅威には映らなかった。

「さーすがシード校、強いなぁ〜」

不意に渡辺の耳に城都弁が聞こえてきた。
後ろを見ると、ニヤリと笑っている、ひょろ長い身体のキャッチャー。打席の渡辺に話しかけられるのは、こいつしか居ない。

(…川道か。確かこいつ、俺とタメやったな)

渡辺はその言葉を無視してスコアボードに目を移し、キャッチャーの名前を確認し
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