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王道を走れば:幻想にて
第一章、その1:どうしてこうなった
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 人は度々、可能性の中に存在する希少な選択肢を引き当てて、それをもって人々を大いに驚嘆させ、畏敬の念を獲得する事がある。国家成立の際、建国の宣言において、神の如き勇壮にして神々しき様を見た者は、その壇上に威風堂々と立つ男を見てこう叫んだ。『あれなるは神の寵愛を受けし者ぞ』。『神の言葉を宿した、聖なる者ぞ』。人々は熱気はやがて臣民を動かし、やがて一つの王朝を誕生させた。王朝の名を知る者はいないが、しかし王朝は幾度となく分裂と結合を重ね、やがてその世界に生きる人々にとって大切な、一つの国家を誕生させた。
 『マイン王国』 。それがそう、今窮地の立場に立っている騎士、アリッサ=クウィスが忠誠を誓う国家の名前であった。


 夜の帳が降りている。
 漆黒の空には明るい色を放った星星が散らばっており、流麗な絨毯を其処に描いていた。赤、青、黄、緑。様々な星が別の星と肩を並べており、幾多ものそれを直線で結ぶと、驚く事に一つの雄大な絵画が出来上がってしまう。まるで空の彼方にも偉大なる芸術家が居たかのようであり、大いなる自然の崇高なる摂理を人々に思わせるものであった。 
 その美麗なる光景とは対照的に、大地には鬱蒼とした闇が立ち込めている。その闇の中では、常ならば獣の遠吠えが僅かに響いているだけであり、其処に人声など聞き受けられるはずが無かった。
 だが実際には違った。人里から遠く離れた山中、小さな森林の中に位置する寂れた教会において、荒っぽい蛮声が聞こえてくる。それに混じって一つ、断末魔のような悲痛な叫び声が教会の中に反響した。
 寂れた教会の中を野蛮な風体の男達が駆け抜けていく。手に持っているのは錆付いた剣、或いは手製の弓矢である。暗闇を照らすためにもう片方の手には松明が握られており、電気の光が通わぬ世界の中、必死に何かを探し出すように疾駆していた。

「居たか!?」
「神父が居たんで殺しただけだ、女はまだ見つけてないっ。そっちはどうだ!?」
「駄目だ、まだ見つからん!他を探すぞ!!」

 男達が息を切らして教会内部の通路を走っていく。その足音が階段下の物置き部屋から遠ざかった時、部屋の戸が音を立てぬよう僅かに開かれた。扉の隙間から深緑の瞳が覗かれ、周囲を窺う。
 戸がゆっくりと開いていき、瞳の持ち主の容貌が明らかとなった。切れ長で深緑の瞳を覆うように、ざっくばらんに切り揃えられた焦げ茶色の髪がひらひらと隠している。きりっ引き締められた口元と見目麗しい鼻筋により、女性の凛々しさが前面に現れていた。
 だが彼女が纏う服装が、その凛々しさを唯の女性自身んの可憐さ故のものとしていない。無骨な鈍い銀色の鎧が油断無く上半身を覆っている。鉄のスカートの下には僅かに太腿が覗かれているが、直ぐにその肌を隠すように無機質な色をした
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