暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第一章、その1:どうしてこうなった
[7/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の艶も色あせる事など在り得ない。だが実晴は眉を顰めて言う。

「若いの、また痩せたな?」
「な、何言ってんだよお前?」
「惚けるでない。此処をこうして抓めばだなぁ...」
「ほひぃっ!?」

 蟹の様に冷たく鋭い指先が容赦なく慧卓の腹の肉を摘んだ。素っ頓狂な声を上げて慧卓が飛び上がり、肌を服で隠して喚く。

「この卑猥星の卑猥人!!何時も何時もセクハラしやがってぇ!」
「ひ、人を性癖倒錯著しい犯罪者予備軍みたいに罵倒するでない!其処までこの老体は飢えに苦しんでいると見えるか!?あたしはショタしか興味ないのよっ!」
「まるっきり飢えた犯罪者予備軍じゃねぇか!!」

 実晴は声を上げ、露骨な欲で以って演義の壁を突き破った。溜息を一つ零し、彼女はロッカーに寄り掛かって言う。

「やめよ、やめ。もうこのキャラ疲れるわぁ...」
「そりゃ無駄にしわがれ声を演じてたしな」
「で、続きなんだけど慧卓、貴方此処最近まともな料理作った事ある?」
「......」

 最近の食事。パン、パン、野菜炒め、野菜炒め、オムライス、野菜炒め、パン、フレンチトースト、ミートソーススパゲッティ、野菜炒めetc,etc。簡単に作れる男の料理、且つお店で安く売られる商品のみ。其処に複雑極まる調理法と、肉の存在は無かった。

「いや、ないな。最近は野菜炒めとか菓子パン中心だし」
「栄養偏りすぎよ、それも草食系統に。お肉食べなさい。そんなんだからお腹の肉の厚みが消えるのよ...好きだったのに」
「好きって何さ...俺肉苦手だな...なんか脂っぽいし、肉汁が気持ち悪いし...」
「そんなんだから何時まで経っても貧弱なの!お肉と脂肪は体の資本!食べないとよくないの!」
「えー...?」
「えーも何も無い!!!ちゃんとお肉料理を作って、ちゃんと二十回噛むようにして食べなさい!じゃないと、本当に栄養失調になるわよ」

 どこぞの逆転弁護士の如く、指をきりっと突きつけて実晴は鋭く命令する。何が悲しくて嫌いなものを食べなくてはならないのか。嘆きを胸中に仕舞う慧卓に、彼女は手を鳴らして言葉を紡いだ。

「さ、今日のお客様方は人一倍大変よ!!さっさと準備をおし!」
「...待て、お前今、様方って言わなかったか?つまり相手は複数だと?」
「そうよ、悪い?」
「...一人ならまだしも複数となるとな、正直自信が無い」

 ワイシャツに身を通してネクタイを締める。後はベストを身にすればそれでお終い。だが気持ちは曇り空。一度に複数人を相手にした体験は経験上極僅か。心配の念が募る。明るい声を伴った実晴が、元気付けるように彼の肩を叩く。

「そう心配しないでも大丈夫よ、慧卓。私も一緒に今日のお客さん達の相手をするから」
「...分かった、実晴。なるべ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ