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王道を走れば:幻想にて
第一章、その1:どうしてこうなった
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後ろの席を指差した。無造作に立体感を出した髪形をした男子生徒が、裏ピースをしてほくそ笑んでいる。UK流『ファッキューサイン』である。ざまぁみろとでも言いたいのか。
 慧卓は引き攣った笑みを零して己のノートに向き直る。その頬には、くっきりと指先の痕が残っていた。



 定刻のチャイムが高らかと鳴り響き、校舎の中から疲れ気味のざわめきが生まれ出す。午後三時、空から降り頻る熱線は然程弱くはなっていない。街行く人々の群れに、本日の用を校舎で費やした生徒らの群れが合流していく。
 これからが本番だと言いたげな活気溢れる生徒らの声が校舎内で生まれ始める中、勤木市立勤木高等学校の重量感の欠片のない校門から、生徒の一人である慧卓も人の波に混ざっていく。
 高校の周囲に立つのは小さな商業ビル、そしてしがなきコンビニの店舗やこれまた小さな居酒屋くらいだ。街路樹の下方の影には、例によって暑さを逃れに人々が其処を歩こうとして、妙な混雑を生んでいた。お客周りを早々に終えたのであろうか、年代問わず男多めの人群れが通りを歩き、車道を車のエンジンの喧騒が覆っていく。
 慧卓はズボンのポケットに両手を突っ込み、スクールバックを背負って一人通りを歩いていく。『さっさと暑さを緩和するスーツでも作ればいいのに』とリーマンの汗だくの姿を見て思い、慧卓は街を歩いていく。

「うっす。ねぼすけ」

 背中をひょいと軽く叩き、勤木高校の控え目な制服に身を包んだ生徒が慧卓の顔を覗き込む。

「ねぼすけいうな。これにはちゃんとした理由があってだな・・・」
「どうせまたゲームなんだろ?猪村君は分かっていますよ」

 勤木高校の一生徒、猪村は慧卓の横について通りを歩き始める。無造作に切り分けられた髪が初夏の暑い日差しを迎えてちらほらと煌く。切れ長の瞳はやはり暑苦しさを覚えているのであろうか、億劫げに細められ、額に小さな汗粒が浮かんでいた。

「ちゃんとした歴史戦略ゲームだぞ?教養にいいんだぞ!」
「はいはい、参考になりますよっと。ったく、最近の若いモンはんな頭使うようなゲームなんかやらねぇっての。『フューズ』の、ほら、この前出た自分の体感と立体映像上の演出を同期させるていうやつ、それのアクションゲーとかやってるって。お前いい加減中毒ゲーから離れたらどうだよ?寝る暇惜しんでやっているから先生に指されたんだろ?」」

 近年世界のゲーム業界を支配するかもしれないと目される、掌サイズの体感型ゲーム機を持ち出す猪村。彼の半ば諭すような口調に、慧卓は手をポケットに突っ込んだまま言う。

「ふん。ちゃんと先生も分かって指したんだよ。俺はゲームを通じて歴史を予習してきている、だから安心して寝ているってさ。でなきゃあの先生の事だ、あの後も嫌味を捲くし立てただろうね」
「ま、それ
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