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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十四話 暗闘
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。この戦いだけでも二千万人近くが死んでいる。イゼルローンやヴァンフリートを入れれば死者は三千万人近いだろう。いい加減嫌になるさ、そうじゃなきゃおかしいよ」
ブレツェリ准将の言葉に彼方此方から溜息が出た。俺も溜息を吐きたい、三千万人? 途方もない数字だ。
「しかしハイネセンでは主戦論が勢いを増しているようだ。フェザーンの扱いが決まらないのも帰還命令が出ないのも今が帝国領へ攻め込むチャンスだと考えている人間が少なくない所為だろうな」
チュン総参謀長の言葉に皆が顔を見合わせた。渋い表情をしている人間が多い。俺も当分は戦争をしたくない、もう沢山だ。
現在銀河帝国は混乱状態にある。帝国政府は今回の貴族連合軍に参加した貴族達に対して敗戦の責任を取らせると声明を出した。具体的には爵位、領地の剥奪だ。そして貴族連合軍に参加した貴族達、より正確には貴族達の遺族や親族は納得がいかないと政府に対して抵抗している。それを帝国の正規軍が討伐している。主戦派の言い分はその混乱に付け込もうというものらしい……。
「先日、電子新聞に亡命者を軍の重要な地位に就けて良いのかって書かれてましたよ。所詮は帝国人で信用できないとか。どう見ても総司令官代理の事ですよ、あれは。書かせたのは主戦派でしょう。ヴァレンシュタイン総司令官代理が和平派に繋がっている事が面白くないらしい」
「まあ繋がっているというより和平派の中核という評価が正しいだろう。だから邪魔なんだろうな。気にすることは無い、面と向かって総司令官代理を非難出来ないから陰口を叩いているだけだ」
ブレツェリ准将と総参謀長の遣り取りに皆が頷いた。戦えば必ず勝つ指揮官を非難できる奴等確かに居ない。むしろ睨まれれば口籠って俯くだけだろう。俺もその記事を読んだが余りに露骨で馬鹿げていて幼稚なのに呆れた。
「大体攻め込む必要が有るんですかねえ、このままいけば総司令官代理の言った通りになるんじゃないですか?」
ビロライネン准将が皆に同意を求めるかのように問い掛けた。何人かが頷いた、それを見て准将が言葉を続けた。
「十二兆帝国マルクですよ? あれって国債の償還とは言ってますけど実際には賠償金みたいなもんでしょう。貴族は壊滅状態で帝国政府は改革を行うと宣言している。劣悪遺伝子排除法は廃法、国債の償還という形で賠償金を払う。これ同盟が勝ったって事ですよ、帝国は負けを認めたんです。もう十分でしょう、帝国が改革を進めるなら攻め込む事なんて無いですよ」
“そうだよな”、“俺もそう思う”という声が彼方此方から上がった。
「主戦派は国債が償還されるとは思っていないようだな。それよりも同盟政府の発行した十五兆ディナールの国債が事実上無くなった事の方が嬉しいらしい。借金が無くなったんだからその分軍事費を増やして帝国領へ攻め込め
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