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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十四話 暗闘
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けた。ヤンが“第三艦隊も同様です”と答えた。第一、第三両艦隊は後方遮断に就いたため破損した艦はそれほど多くない。ヴァレンシュタインがビュコック元帥、ボロディン元帥に視線を向けた。二人の元帥が頷く、本題か。

「貴官達には私と共にウルヴァシーに行って貰う」
ボロディン元帥が言った。ウルヴァシー? 今回の戦いでは補給拠点として使っている所だが現時点でウルヴァシーに艦隊を動かすというのはどういう事だ? 単なる警備とも思えんが何か問題でもあるのだろうか? ヤンも訝しそうな表情をしている。それに“私”と言った。ビュコック元帥は関係ないのか?

元帥達は訝しんでいる俺達を見ていたが顔を見合わせると微かに苦笑を浮かべた。ヴァレンシュタインも苦笑を浮かべている。立ち上がると執務机に向かい引き出しから何かを取り出した。封筒の様だ。ソファーに戻って来るとその封筒を俺に差し出した。

嫌な予感は強まる一方だが拒絶は出来ない。受け取って中の紙を取り出した。……なるほど、三個艦隊を動かす理由はこれか。有り得ないことじゃないな。ここで選ばれたという事はそれなりに信頼されているという事だろう。ヤンが俺と紙を気遣わしげに見ている。喜べ、お前さんも信頼されているらしい。紙をヤンに差し出した。



宇宙歴 796年 1月 30日  フェザーン  第一特設艦隊旗艦 ハトホル   ジャン・ロベール・ラップ



「どうなるんですかねぇ」
「さあ、どうなるのかな」
コクラン大佐とウノ少佐が首を傾げながら話している。二人だけじゃない、ハトホルの艦橋には他にも首を傾げている人間が居た。俺も首を傾げたい、これからどうなるのか……。総司令官代理が居れば尋ねるのだがあいにくと自室に籠っている。

「我々は何時になったらハイネセンに帰れるんです?」
「政府から帰還命令が出れば帰れるよ」
「出るんですか、それ」
ウノ少佐が疑わしげな声を出すとコクラン大佐が“さあね”と肩を竦めた。艦橋には脱力感が漂っている。

「今のままじゃ帰還は難しいだろうな、フェザーンの扱いだって決まっていないし」
コクラン大佐の答えに皆が顔を顰めた。フェザーンをどうするのか、政府の方針ははっきりとは決まっていない。同盟政府はフェザーンの独立を保証するとは言ったがそれ以上の事は何もしていない。

「このまま帝国領に攻め込めとか無いですよね」
「……ハイネセンにはそう考えている連中もいるみたいだな」
「戦争継続となったら総司令官代理は如何するんですかね。この間は辞めると仰っていましたが」
「難しいだろう、軍が簡単に総司令官代理の退役を認めるとは思えんよ」
「そうですよね」
コクラン大佐とウノ少佐の会話が続いている。皆が頷いている。

「総司令官代理の気持ちも分からんでもないよ
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