面白ければ何でも良い。
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のみ、その噂を信用していなかった。 いや、少年だけでは無い。 ほとんどの貴族がヒイラギを、『己の実力に酔いしれ身分をわきまえずに大きな顔をしている傲慢な奴』と一方的に決めつけて見下していた。
少年のヒイラギに関する評価は、『確かに実力があることは否定できないし、珍しい黒髪に黒目で顔立ちも異様に整ってはいる。 しかし、平民の分際で貴族を目の敵にする反貴族派の筆頭だという時点で、程度が知れるというものだ』というものであり、同じクラスでありながらも目に入れば常に侮蔑の視線を投げかけ、言葉を交わしたことは一度として無かった。
「できた……っと」
そんなヒイラギがぽつりと独り言を零し、白い便箋を同じく白い封筒にしまう。 それは、シンプルながらも学園の購買で売られている中では一番高価な、貴族の生徒御用達のレターセットで、平民にはなかなか手が出せないはずのものだった。
荒々しく扉を開けたのだからこちらに気付いているはずなのに、全く無反応なヒイラギに少年は漠然とした苛立ちを感じ、いつもなら無視していたにも関わらず声をかけてしまった。
「おい、貴様っ。 こんな時間に一人で何をしている!」
「ん。 ああ、グレンザードか。 ちょっと両親に手紙をね」
無視されるかもしれないと思ったが、あっさりと質問に答えられたばかりか、にこやかに微笑まれたことにグレンザード、正確にはシリウス=グレンザードは少しばかり驚いた。
「……ふん。 手紙など、教室でなくとも何処でも書けるだろう?」
「うん……でも、折角今年からSクラスになれたからね。 自慢したくってさ」
「はぁ?」
ヒイラギはくるりとシリウスに背を向け窓に近寄る。 窓を開け、手紙を持った右手を窓の外に伸ばした。
そして、一体何をしているのかと訝しげに見つめていたシリウスの前で、突然ヒイラギの右手が青い炎に包まれ手紙が一瞬で消し炭に代わり、最後には炭の一欠片も残すことなく煙となって空へ登って行った。
「お、おい!? 何をやっている!?」
「うん? 手紙を送ってるんだよ?」
「燃やしてしまっては届かないだろう!」
手に持ったものを燃やすのは非常に繊細な魔力操作が必要であり、わずかなミスで火傷を負ってしまう。 しかも、無詠唱だ。 シリウスは、やったことが無い故に自分にできるか自信が持てず、何故そんな行動に出たのか理解が出来ない苛立ちと『そんな高等技術を平民のくせに……』という嫉妬心が混ざり、八つ当たりのように声を荒げたシリウスだったが、振り返ったヒイラギの表情に息を飲んだ。
「……そうかもな。 でも、もしかしたら届くかもしれないから、さ。 ――俺の親、もう死んじゃってるから。 ほら、あの世って何となく上の方にありそうじゃん?」
「……っ!」
ヒイラギ
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