魔王は勇者の世界を知りたい。
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逆に、人々に八つ当たりで破壊された、人間が大好だった魔族の村のこと。
助けたエルフの姫君のこと。
勇者を異世界から召喚した姫巫女のこと。
剣術を教えてくれた王宮の騎士団長のこと。
世界を救って欲しいと頭を下げた王様のこと。
元の世界では、自分を見ない親に認められようと勉強や運動を頑張っていたこと。
通っていた学校のクラスでイジメが起こり、いじめられていた子を助けたら今度は自分がイジメの標的にされたこと。
助けたはずの子にも暴力を振るわれ、親にも見て見ぬふりをされ、孤独だったこと。
引きこもりになって、ネットゲームばかりしていたこと。
引きこもりになっても、親は何も言わなかったこと。
漫画やアニメの勇者や正義のヒーローに憧れ、異世界転移物の小説を読み漁っていたこと。
――この世界が、勇者のやっていたネットゲームの世界に酷似していること。
「嫌だ――見るな、見ないで、くれ……嫌だぁアあぁああァあああああァアアアア――あ゛」
勇者の叫びが不自然に途切れ、その身体から力が抜ける。
魔王に流れ込んでいた勇者の記憶も途絶え、宙づりにされた勇者の足元には彼がマジックボックスにしまっていたアイテムがドサドサと落ちていく。
「あ、死んじゃった……」
ぽつりと魔王がそう呟いた瞬間、勇者の身に刻まれた、命の灯が消えることで作動する自動帰還魔術が展開し、勇者の骸は彼を召喚した王国の召喚の間に転送されていった。
「――可哀そうな勇者。 孤独な勇者。 君は私を倒して人々に認められたかったんだね。 でも本当は、大好きなお父さんとお母さんに認めて欲しかったんだ。 結局誰にも認めて貰えないまま君の人生は終わった。 幼い勇者。 可愛い私の勇者――やっとわかったよ。 我が身を犠牲にしてまでも私を殺そうとする君達のことが。 君は……君達『勇者』は、誰かに認められたがっていたわけだ。 すごいね、よく頑張ったねって褒めて欲しかった。 それだけのことだったんだ」
魔王はそう独白し、ふと、その口元が嘲笑するかのように弧を描く。
「愚かな事だ。 何故他人に認められる必要がある? 君たちは十分優秀な個体なのに。 自分を認めない奴らなんか、皆殺しにしちゃえば良いだけじゃないか」
「彼らと私達は似て非なるモノ。 ――彼ら、ヒトというモノにとっては、私たちが下らぬと切り捨てるモノが時にその命よりも重きモノに成り得るのですわ」
「ラスティアラ……――分かった風な口を利くね」
雪景色の窓の外に、凍り付くような氷色の髪と青白い肌をした美しい女が片膝を立てて跪いていた。 一見人間に見えるが、その耳は氷で作られた鳥の翼のようになっており、彼女が人間では無いことを主張している。
ラスティアラと呼ばれた彼
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