書展
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が字を取りに来たのだろう。
「よお瀬川、字を預かりに来たぞ」
「そうか、上がってくれ」
澤田に字を見せるために部屋にあげる。そこで瀬川が最初に言ったことは…
「これはかなりの出来じゃないか!?これなら榎田さんに勝てるかもしれないぞ」
「それはむりだろう」
確かに自分でもかなりの出来ではあると思うが榎田さんに勝てるとは到底思えない。
「だが入賞は行けるんじゃないか?」
そう言った後澤田は個性を出すために書いてみた練習の字を見るが途中で見るのをやめて
「これは微妙だな」
とだけ感想を述べた。分かってはいたが他人に言われると正直ムカつく。
「まあ、今回は榎田さんも居るし変なチャレンジは出来ないよな」
と、励ましなのか総合的な感想なのか分からない言葉を残して澤田は去って行った。勿論字を持って。
「分かってはいるんだよ」
誰にでもなく呟く。個性的な字。これは俺の昔からの課題だ。どうしてもそういった字が書けないのだ。
「やっぱ、インスピレーションってやつなのかな」
結果から言えば書展は準賞、つまりは二位だった。一位はやはりというかなんというか榎田さんだった。
そして驚いたことに…
「聞いて驚け瀬川!お前の字、榎田さんと結構僅差だったぞ!」
「そうか…」
審査が終わり結果が発表されたすぐ後、澤田から電話があった。だが俺はあまり嬉しくは感じなかった。
「何だ、あまり嬉しそうじゃないな」
「いや、そんなことないけど…」
基本に忠実に、手本のように書く字は審査員の受けもいい。それにそれでは俺の字だとは言えない気がするのだ。
「榎田さんの字と俺の字じゃ点数は僅差だとしても大きな差がある」
「…それは」
やはり澤田も分かっていたようだ。榎田さんの字はやはり見ただけでこれは榎田さんの字だと分かるものだった。
基本に忠実そうに見えて所々に個性の入った字、俺とは全く違う。
「…まあ、それはこれからの努力でどうにかするしかない」
「そうだな」
今よりもっといい字が書けるように努力していこう。
「それより、お前に仕事があるんだが」
「どんな?」
澤田からの仕事は店の看板を書くことだった。
☆★☆★
「いい感じじゃないか?」
『来栖食堂』
今回依頼してきた店の名前だ。名前から分かる通り定食屋だ。個人経営ではあるがかなり評判がいいらしく今回、看板も新しくすることにしたらしい。
「こういう仕事はさすがだな」
やはり店の看板などはきっちりとした字の方が好まれる。俺に依頼されるものもほとんどがそういった店から来るものだ。
「書展二位の肩書もあるしな。これからは前よりも仕事増えるかも
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