他が為の想い
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だけでも生かそう。
一つ、ずっと考えていた事がある。
俺が死んだらこの世界はどうなるのか。
もし、俺という異物によって影響を与えられた人物が、俺の想いを繋いでくれたなら……それは世界改変になるのではないか。
そう考えて、俺は本城に残した徐晃隊の一人に一つの書簡を埋めた隠し場所を告げておいた。
決して開けるなと上位命令を敷いて、民に紛れさせ、いつか来る時に雛里と朱里に渡るように手を打っている。
俺が死んだらその存在を二人の天才に伝えるようにと。今回の出立前、桃香の選択後が分の悪い賭けになる為に行わざるを得なかった。
書いてある事は未来の知識の多くと、乱世での大局の事。曹操を倒すならばどのような戦にするかが第一。
俺が死なない事が大前提だとしても、戦を行っているのだからふいに死んでしまう事もあるはずなのだ。
だから残した。全てを。天才たちが煮詰めれば役に立つモノを。虎牢関で呂布に殺されかけてから内密に書き進めていたモノを。
俺は天才では無い。
まがい物の実力と、この時代にあるはずの無い知識でそう見せているだけ。
落ちた時からこの世界の人間にとっては嘘つきで、自分の都合で乱世を掻き回す侵略者。
そんな俺は死ぬまで嘘を貫き通してから死ねばいい。
俺もバカ共のように想いを繋いで貰う一人になるんだ。
あの子が幸せに生きてくれる世界の為に、目の前の肉を全て切り払って死んでくれよう。
幾刻もの方円陣での進撃も、そろそろ限界が見えてきていた。徐晃隊の連携も、副長の動きも、秋斗の暴力も、全てが鈍く、鋭さが無くなっていた。
秋斗の身体からは血が滴り、細かい傷が多い為に徐々に体力が奪われている。
副長も徐晃隊も、連携を齎す数が圧倒的に少ない為に休憩のスパンが短く、さらには大きな傷も小さな傷も受けている為に肩で荒く息をしていた。
「密集形態! 体力を絞りきって俺の後に続け!」
張り上げた声は力強く、徐晃隊に最後の希望を与える。もはやそれしか手が無い事は誰しも分かりきっていた。少しでも数を減らし、最後の最後でそれを行うしかなかったのだ。
ふいに、秋斗が自身の首から引っさげていた笛の紐を引き千切って徐晃隊の一人に投げやった。
「副長に伝えろ! 必ず生き残り、雛里を守りきれとな!」
コクリと頷く隊員を見てから振り向いた秋斗は一人、敵の立ち並ぶ場所に無理やり突っ込んで行った。
振り下ろされる剣も、突きだされる槍も、ギリギリのところで躱しながら前へ前へ。
吹き飛ばす方向も、斬り飛ばす方向も、全てが前へ前へ。
追随する徐晃隊達は、彼に群がろうとする敵を薙ぎ払い、突き殺し、前へ前へ。
それでも……やはり足りなかった。
少なくない数の槍は動きの鈍った秋斗の身
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