カトレーンの証明
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「こんな力、欲しくなかった・・・姉さんを苦しめる、災いの力など」
自分の右手を見つめ、クロスは呟いた。
伏せられた青い瞳はどこか悲しげで、口元は薄い笑みを湛えているが楽しそうにも嬉しそうにも見えない。
呟かれた言葉は辛そうで、悲しそうで、何かを憎むようで――――――。
「災いの力だぁ?モノ増やせんのが悪ィ力なのか?」
「いや・・・その解釈は違うさ、ドラグニル」
訳わかんねぇ、と首を傾げるナツに、クロスはゆっくりと首を振る。
「複製の力が悪い訳じゃない」
「じゃあ何が災いなんだよ?」
「魚増やせるなんてすっごく便利なのにねー、はむはむ」
ナツ同様、クロスの言葉の意味が解らないグレイが首を傾げ、ハッピーは2匹目の魚を頬張りながら同意するように頷く。
「・・・この力が、“カトレーンの証明”だから―――災いなんだ」
憎しみを吐き出すように紡がれた言葉に、全員言葉を失う。
クロスの青い目に、静かに怒りが宿った。
だが、その怒りの矛先が向くはギルドメンバーではなく、闇ギルドの人間でもなく、シャロンでもない。
―――――――クロス自身だ。
「俺さえ・・・俺さえ生まれなければ、姉さんはカトレーンでいられたんだっ・・・!」
「やっとー、当番ー、変わったー。さてとー、暇だしー、殲滅ー、いこっかなー」
語尾を伸ばす特徴的な喋り方をするのは、闇ギルド災厄の道化に所属する少女、シオだ。
若干ぶかぶかの緑パーカーを着用するシオはカトレーン本宅の無駄に広く無駄に長い廊下を1人で歩いている。
「おや、シオさん。見張り御苦労さまデス♪」
「セスー、やっほー」
口調がなまっているこの女性は『セス・ハーティス』。
カールさせたブロンドのロングヘアに肉感的な肢体の大人びた女性だ。
肌が多く露出されるような服を纏っている。
とびっきりの美人ではあるのだが、その左胸に刻まれている災厄の道化の紋章が妖艶な雰囲気に闇を差していた。
「相変わらずー、露出多いねー」
「そんな事ないデス」
「でもまー、セスみたいなー、体型ならー、騙されるー、バカもー、多そうー、だよねー」
現に、セス・ハーティスという女はこの肉感的な肢体を利用してきた。
正規ギルドの人間を魅了し、妖しく微笑み、少し甘い声で囁くだけで大抵の男は力を失う。
そこを魔法で叩き潰し、数々の勝利を収めてきた。
「それじゃー、私ー、殲滅ー、行ってくるからー」
「了解デス、気を付けてくださいデス」
「うんー、解ったー」
とてとてとシオは廊下を駆けていく。
その後ろ姿を、セスは見送っていた。
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