カトレーンの証明
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を思った。
『何でコイツ最初に「自分の姉をここまで称賛するのもどうかと思うが」って付けたんだろう』と。
そして同時に『シスコンと書いてシスコンと読む』クロスが『変人と書いてシスコンと読む』へとグレードアップした。
「だが・・・完璧な姉さんにも、足りない物があった。それが無いから、出来損ないと呼ばれてきた」
感情を静かに抑え込む。
抑えきれない容量オーバーの感情は拳を痛いほどに握りしめる事でどうにか堪えた。
そして――――――静かに、告げる。
「複製能力・・・カトレーンである証明を、姉さんは持たずに生まれてきた」
先ほどクロスが見せ、災いの力と呼んでいた力。
姉さんを苦しめる災いの力、と。
「カトレーンの優秀か否かを決める判断基準は、基本的に複製能力の有無だ。あればカトレーンを名乗る事を許され、なければ下手をすれば殺される」
たった1つ。
複製能力の有無で、扱われ方が変わる。
「俺は力を持って生まれ、姉さんは力を持たずに生まれた・・・双子の片方は力を持っているのに、もう片方は持っていなかった。そんなの・・・俺が姉さんの力まで奪ったようにしか考えられない」
それこそが、クロスが思い詰めていた最大の理由。
これが1つでも歳の離れた兄妹なら、悩む必要なんてない。
だが、この2人は双子。同時に母親の中に命を宿し、同じ日の同じ時間に生まれた双子なのだ。
弟が力を持ち、姉は力を持たない・・・自分が姉が持つはずの力まで奪ってしまったと考えても違和感はない。
「姉さんは優しいから、違うと言ってくれるけど・・・俺が背負うはずだった不幸の分まで、姉さんは背負って抱えている。それが嫌で・・・だけど、姉さんはその不幸を1人で抱えて・・・俺には少しも分けてくれない」
拳を握りしめて辛そうに言葉を紡ぐクロス。
右手を空気の渦へと突っ込み、別空間から剣を取り出した。
「だから俺は強くなりたいんだ。姉さんが抱えて離さない不幸を消し去る為に。少しでもその不幸を分けようと、姉さんが思ってくれればそれでいい・・・それだけで満足なんだ」
だけど、姉さんは意地っ張りだから。
ずっとずっと、1人で残酷な運命の上を歩いてる―――誰も、寄せ付けないで。
消えそうなほどに小さな声で、クロスは呟いた。
「・・・」
かける言葉が見つからなかった。
姉が不幸を抱えて誰にも打ち明けない事が、弟の最大の不幸。
助けたいのに、助けられない。苦しめているのは自分だから。
ずっと抱えて、誰にも打ち明けず誰とも分けようとしなかった最大の不幸を語るクロスに言葉をかけられる程、ナツ達はまだ、言葉を知らない。
「・・・それだけなら
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