第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第四章
「遠い国だよね」
「一応日本が何処にあるかはわかるよな」
「学校で習ったからね」
学校の授業でだ。それはわかることだった。
「一応ね。海の向こうにあるあの島国」
「そうさ。我が国と比べるとずっと小さいけれど」
国土の広さは違っていた。モンゴルの方がずっと小さい。
「けれどそれでもね」
「豊かなんだ」
「その日本との付き合いが出来てきてるんだよ。観光客も来てるしな」
その観光客の話もしながらだ。トウルイはテルグを案内していく。そうしてウランバートルを回っている中でだ。テルグはまた見たことのないものを見た。
「あれっ、これは」
「ああ、食べたことないんだな」
「ええと。何これ」
食堂の前だ。そのサンプルコーナーにある様々な食べ物を見てトウルイに尋ねているのだ。
「草だよね。しかも赤いのとか黄色いのもあるし」
「それ中華料理だよ」
「中華料理っていうと」
「そうさ、中国の料理さ」
彼等モンゴル人とは歴史的に色々あったその国のだというのだ。
「その細長い麦を伸ばしたのとか」
「これは確か」
「麺っていうんだよ」
「だよね。それは食べたことないけれど」
「ああ、麺もか」
「ずっと草原の中にいたからね」
それでだ。食べるものはというと。
「肉に乳製品に。あとは」
「お茶だよな」
「そういうのしか口に入れてないから」
「本当に草原で生きてきたんだな」
「学校の従業も。草原の中だったし」
所謂青空教室だったのだ。
「そうだったからね」
「だから麺も知らないんだな」
「どんな味かな」
興味をだ。テルグは言葉に出した。
「一体」
「食ってみるか?」
「安いのかな、これって」
「そんなに高くないさ。ここは誰でも入る店だしな」
「誰でもって」
「店によったら金持ちしか入られない店もあるんだよ」
そうした店があることも草原ではわからないことだった。町のことだからだ。
「まあここはそういう店じゃないからな」
「別に入ってもいいんだ」
「そうさ。じゃあ入るか」
「うん。それにしても中国人ってのは変わってるね」
テルグは店に入ることを決めてからもだ。こう言うのだった。
「草まで食べるなんて。羊みたいだね」
「ああ、それ野菜っていうんだよ」
「野菜?」
「畑って場所で育てて食うんだよ」
「畑も授業で勉強したけれど。田んぼも」
「そこで育てて食うんだよ。わかったかな」
「一応は」
「あと果物もあるからな」
見れば甘いものもサンプルコーナーにあった。それもだ。
「じゃあ中に入ってそういうのも食うか」
「それじゃあ」
こうしてだ。テルグは生まれてはじめて麺や野菜、それに果物を食べた。その感想は。
「不思議だね」
「美味かったか?」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ