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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第87話 ルルドの吸血鬼事件
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既に存在して居たのですが、それを比較的に温暖なロマリアで、奴隷を農園で働かせる事に因って生産した砂糖が少量出回るだけですから、非常に高価な代物しか存在して居ませんでした。
 病気の際に使用される薬扱い、と説明すると分かり易いですか。

 もっとも、それをガリアの産物に加えるかどうかは……。
 砂糖農園と言うのは安い労働力が大量に必要。地球世界でも、砂糖の生産が増したのは大航海時代の、更にあの悪名高い奴隷商人が横行した時代。
 時代区分で言うと、今、俺が存在して居るこの時代と成るのですが……。

 ただ、この時代に植民地化され、砂糖の農園を開発された国々は、地球世界の歴史では二十一世紀を迎えた現在でも未だ発展途上国と成って居る国々が多く……。
 後の歴史の流れから考えると、お茶、それに砂糖を押さえるのは、世界経済を握る早道と成るのは確実なのですが、その歴史を知って居るが故に、安価な労働力を奴隷制度などに求める訳にも行かず、更に、植民地支配など……。

 俺の思考が、日本語的に説明するとホットワインから、ポルトガル領のマデイラ諸島。そして、アフリカ大陸のベニン湾から、オランダ及び、イギリスの東インド会社の設立時期へとダッチ・ロールを繰り返している最中。
 上座に座らされた蒼い髪の毛の少女が、湯気を真っ直ぐに上方へと伸ばしているカップに両手を添え、ゆっくりと口に運ぶ。

 そして、僅かに洩らされた吐息が口元を白くけぶらせた。

 その瞬間。
 ……現実に国の舵取りを任されている訳でもなし。そんな、袋小路に入るしかない思考に囚われて居ても意味がない事にようやく気付いた俺。
 そもそも、俺の役割は有る一定の時期までルイ王太子の役割を演じる事。其の後は、タバサが望む生活の基盤を作れば良いだけ。

 貴族の生活から離れ、晴耕雨読のような生活の基盤ぐらいなら、差して難しい物でも有りませんから。

 そう結論付け、暖炉を背に上座に腰を下ろした二人の少女から、下座……ドアに近い位置に腰掛ける白髪、白い髭の老人に視線を転じる俺。
 そう、老人。地球世界の日本で言うのなら、見た目は最低でも七十歳以上には見えますが、このハルケギニア世界では庶民の平均寿命は三十代後半。四十代だともう老人の仲間入りだったはずですから……。

 見た目ほどの年齢ではない可能性も少なくは有りませんか。
 髪の毛は多め。当然、それ故に白髪。髭も白い。身長は俺よりは低く、タバサ、ブリギッドよりは高い。おそらく、百六十から七十までの間。恰幅は良い。老人特有の錆びた声に交じるのは、明らかな疲れの色。
 う〜む。もしかすると、この吸血鬼事件の心労から、ここ一カ月の間に、それまでに倍する速度で老いが進行して行ったと言う事なのでしょうか。

「それでは村長さん。主だ
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