第5章 契約
第87話 ルルドの吸血鬼事件
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の因子とは違う種族の物なのか。
「どちらも可能性は有るけど、偽の情報を流すよりは、真実を発表した方が安全」
真実の中に、多少の欺瞞を混ぜた方が真実味を増しますし、更に、吸血鬼関係の情報と言うのは、犠牲者の生死に関わる情報と成り得るので、自らに税を納めてくれる民をいたずらに死地に追いやるとも考え難い。
少なくとも、タバサたちの血の中に潜む吸血鬼の因子は、血に狂った獣の如き吸血鬼などではなく、高貴なる者の義務をその精神の中に刻み込んだ種族。自らの民を害する者を許すような連中では有りません。
そう考えると、このハルケギニア世界には、屍食鬼を作る種類の吸血鬼と、サーヴァントを作る吸血鬼の二種類が居ると考えた方がしっくり来るでしょう。
その瞬間。紫から蒼へと移行した東の氷空から、黎明の光が射しこんで来た。
夜の段階から判って居た通り、今朝は冬に用意された晴れ。放射冷却の影響から、周囲の気温は零度を軽く下回っている事が確実な冬至の日の始まり。
俺の腕時計が指し示す時刻は既に朝の七時。結局、夜の間に現地入りした目的を果たす事は出来ませんでしたが、それも仕方がないでしょう。
確かに、他人の家を訪ねるには多少、不謹慎な時刻ですが、吸血鬼の脅威に晒された村は、そんな細かな事をどうこう言うとも思えません。
ならば……。
「そうしたら、そろそろ村に向かうか」
☆★☆★☆
上座に座らされたタバサと崇拝される者ブリギッド。ふたりの目の前には良く温められた砂糖入りのヴァン・ショーと言う飲み物から真っ直ぐに立ち昇る湯気が、まるで一本の柱のように見えて居た。
これがお茶なら、茶柱が立ったと言うべき状態なのでしょうが。
但し、ヴァン・ショーとは砂糖を加えた赤ワインを温めた物。その赤いワイン……。救世主の血に例えられる液体が、この街を覆う暗い影を連想させ……。
もっとも、この飲み物はこのハルケギニア世界の新年を祝うお祭り。始祖ブリミルが聖地に降臨した日を祝う降臨祭とやらに飲む飲み物だそうですから、その日を明日に控えた今日、遠来からの客人に振る舞われたとしても不思議ではない飲み物らしいのですが。
それに、ワインに関してはこの地方で造られるワインですが、砂糖に関しては俺が持ち込んだお土産ですし。
実際は、土地神たちに対する御供え物だったのですが、肝心の土地神たちは存在せず。さりとて持って帰るのも面倒ですし、お土産をガリア政府からの見舞いの品だと言って渡せば、大きな違和感も発生しませんから。
尚、このハルケギニアの甘味。特に砂糖に関しては、大航海時代が未だ訪れていないハルケギニア世界では当然のように植民地が未だ存在せず……。サトウキビ自体は聖戦の際にエルフの国から奪って来た物が
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