第5章 契約
第87話 ルルドの吸血鬼事件
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バサ。その言葉と同時に、俺の見鬼の結果も出る。
しかし……。
「そんな心配はない」
悲愴な覚悟により発せられた言葉を、冷厳と否定して仕舞う強き言葉。そう。夜明け前の冬至に相応しい大気と同じ冷たさを持つ言葉が、しかし、蒼き吸血姫の不安を簡単に一蹴して仕舞った。
そして、ブリギッドは更に続けた。高位の精霊に相応しい厳かな声音で。
「オマエがガリア王家の血を受け継いでいるのなら、そのグールを作り出すと言う吸血鬼ではない」
その言葉を聞き、俺も軽く首肯く。
彼女の……自らの相棒の不安を和らげるように。
「いや、多分、タバサに血を吸われても、俺は屍食鬼に変わる事はないと思うぞ」
俺の見鬼は実際に出会った事が有る相手と同じ種族なら、ある程度の能力を見極める事が出来る能力。
その見鬼が告げて来ている結果は、
「タバサ。オマエさんが作るのはサーヴァント。少なくとも、暗闇に潜み、夜な夜な新しい屍を求めて墓場を徘徊するような、知性を感じさせない屍食鬼を作り出す事はない」
俺の住んで居た地球世界では、夜の貴族と呼ばれる基本的な吸血鬼の生態を説明する俺。
それに、良く考えて見ると、タバサは血の覚醒を経て覚醒した吸血姫。彼女が自分自身の種族の特性を知り尽くしているか、と問われると……。
おそらく、彼女の家。オルレアン家には、自らの家に吸血姫の因子が流れて居る、などと言う伝承は存在して居なかったでしょうし、もし、伝わって居たとしても、ギアスに因り精神を操られて居たオルレアン公がタバサに対して、そのような秘事を正確に伝えて居た可能性はゼロ。
その辺り。吸血姫の生態に詳しいと思われる人物。ジョルジュ・ド・モーリエンヌや、マジャール侯爵夫人アデライード。それに、ガリア王ジョゼフ一世などに対してタバサが問いを発した事は有りませんでしたから……。
少なくとも俺の知って居る範囲内では。
ここから考えると、彼女はその辺りの知識に関して不足していた可能性も有りましたか。
「まして、ただ血を吸っただけでサーヴァントを作り出す訳でもない」
これは、彼女自身が血の渇きに苛まれている可能性も有りか。そう考えながら、更に説明。……俺の知って居る地球世界の吸血鬼の説明を続ける。
そう。タバサと同じタイプの夜の一族が自らのサーヴァント……血の伴侶を得るには、血の盟約を相手と交わす必要が有ります。
それは、お互いの血液の交換。つまり、タバサが俺の血液を吸うのと同時に、彼女の血液を俺に送り込まなければ、俺は彼女のサーヴァントに成る可能性は低いと言う事。洒落のきき過ぎた吸血鬼の中には、自らの行いを聖体拝領などと称する連中も存在する行為が必要ですから。
そもそも、人間の数倍の寿命を持つ吸血鬼
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