第5章 契約
第87話 ルルドの吸血鬼事件
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血鬼と同じ感覚。ジョルジュやジョセフ王からも同じような気配を感じて居るので、同じ種類だと思って間違いないでしょう。
もっとも、俺が直接知って居るのも、この東欧に端を発する吸血鬼と、後はエンプーサやラミアなどのギリシャ神話に登場する連中だけ。それ以外の連中とは直接出会った事がないので……。
そう詳しいと言う訳でも有りませんか。
まして、エンプーサやラミアはどちらかと言うと夢魔に近い種族ですから、実体……肉体を持つ種族と言うのはタバサと同じタイプの吸血鬼しか知らないのですが。
しかし……。
俺の問いに、一瞬、身体を強張らせるタバサ。そして、普段以上にゆっくりとこちらの方向に顔を向け、
俺の視線と彼女の視線が絡み合う。普段通り、感情を示す事のないふたつの蒼玉が、今も俺の瞳を覗き込んだ。
いや、今の彼女の瞳は微妙に揺れて……。
しかし、それも一瞬。僅かに首を横に振り、同時にかなり強い陰の気を発生させるタバサ。
ただ、この反応は意味不明なのですが。
まさか、俺のこのハルケギニア世界の知識の源。彼女が吸血鬼の生態に付いての詳しい内容を知らないとは思えないので……。
そう俺が考えながら、訝しげに彼女を見つめ続けて居ると、
「太陽が苦手」
普段通りの口調……哀しみも、喜びも。そして、恐怖も存在していない平坦な、非常に抑揚に乏しい口調で話し始めるタバサ。
但し、同時に俺には分かる。これは普段の彼女ではない。
これは……不安のような物か……。
そして、
「人を襲い、血を啜り、被害者を死に至らしめ……」
言葉を続けるタバサ。そして、更に強く成って行く陰の気。
「被害者を自らの僕。グールへと変化させる」
そう言った瞬間、それまでで一番強く陰の気が発せられる。
しかし、グール……。屍食鬼を作り出すのか。
グールとは、元々、イスラム圏に出没していた屍を食糧とする鬼で、十字軍の遠征の頃に、そのドサクサに紛れて西洋にやって来たと言われている存在。確か、クトゥルフ神族にも何らかの関わりが有ったとは思いますが……。
俺が自らの知識に存在している吸血鬼との違いに少し知識の整理を行って居る最中。タバサは更に言葉を続ける。
「あなたをそんな存在に変える事はない」
かなり強い語気。確かに、グール……つまり、屍食鬼に変えられるなど御免被りますが、タバサ自身はそんな種類の吸血鬼ではないと思うのですが。
訝しく思いながら、確認の為にタバサに対して見鬼を行う俺。
その最中も続けられる彼女の言葉。
「もし、わたしが渇きから血を求めるだけの悪鬼と成り果てたなら……」
躊躇わずに、あなたの手で滅して欲しい。
悲愴な決意の元、そう話し終えるタ
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