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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第87話 ルルドの吸血鬼事件
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。それなら、ブリギッド。オマエさんは、その土地神たちが消えた理由を調べていると言う訳なんやな?」

 先ほどの独り言の事など忘れたかのようにそう聞く俺。

 ただ、土地神を召喚してこちらの事件――。吸血鬼事件の神霊サイドからの情報を得ようと思っていたけど、それは難しい事が判明。
 更に、吸血鬼ならば精霊と契約出来る以上、その土地神たちが消えた事態に何らかの関係が有ったとしても不思議ではない。

 どうやら今回の事件に関しても、当初……ここに来るまでに俺が考えて居た以上に危険な事件の可能性も出て来たと思うのですが……。

 俺の問いに、かなり難しい表情で首肯くブリギッド。
 成るほど。

「それならば、今回は俺たちと一緒に捜査を行おうか」


☆★☆★☆


 ガリアの南西部。ガスコーニュ地方に存在する田舎町ルルド。
 火竜山脈の麓に存在する人口五百人足らずの町に吸血鬼騒動が発生したのは、例年よりは少し早い紅葉が訪れた十月(ケンの月)の終わりの事で有った。

 未だ火竜山脈がその名の通り、異常な熱を発して居た秋。
 前日の夕刻より見えなく成って居た十二歳の少女。フランソワーズが変わり果てた姿で発見されたのは、一面を黄色く色付けた銀杏の木が存在する森の入り口付近で有った。
 但し、その時に発見されたモノを、最初、前日の夕刻より見えなく成っていた少女だと気付いた者はいなかった。
 それが例え、彼女の事を一晩中捜していた実の両親で有ったとしても。

 山の入り口に広がる森。其処に無造作に放り出されて居たソレをどう表現すべきで有っただろうか。
 手足は小さく縮め、何かにおびえるかのように見開いた目。前日までは瑞々しい年相応であったくちびるが、今では完全に水分を失い、白い歯がむき出しの状態と成り……。
 若鮎の如き、と表現されるべきその全身もまた完全に水分を失い、まるで枯れ木の如き色合いの筋張った骨と皮だけの姿に。
 内臓の一部と、身体中の水分と言う水分をすべて失った、まるで数千年の長きに渡って自らの墓所で眠り続けた木乃伊(ミイラ)の如き姿と変わり果てて居たのだ。

 最初の犠牲者が出てからは、ほぼ週に一人のペースで犠牲者が増えて行き……。
 尚、当然のように、最初の犠牲者が出た後に、ルルド村の方でも何の対策も施さずに事態をただ見守って居た訳ではない。
 夜は戸口を堅く閉め、灯りを絶やす事もなく、三人目の犠牲者が出た時には、村人総出で安全と思われる昼の間に近場の森の捜索も行われた。
 しかし、その結果はすべて空振り。
 如何に夜間の戸締りを厳重にしようとも、まるでその行為を嘲笑うかのように犠牲者の数は増えて行き……。

 そして、ガリア政府としてもこの木乃伊事件を見過ごしていた訳ではなかった。
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