第二章
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第二章
「有り難いと思ってるよ、僕も」
「じゃあいいじゃないか」
「そうして日本に相撲に行ってもね」
「それで大成功するのも」
「遊牧だけじゃないんだ」
そのことがとにかくだ。テルグには想像がつかなかった。友人達の話を聞いても。
それでだ。彼はまた言うのだった。
「何か信じられないね」
「じゃあさ。一度首都に行ってみたらどうかな」
「そう、ウランバートルにね」
「そうしてみたらどうだい?」
「町になんだ」
そう友人達に言われてだ。テルグはだ。
少し考える顔になった。そのうえでだ。
実際に町に行ってみることにした。そのウランバートルにだ。
馬で何日かかけて町に来た。するとだ。
そこにはゲルはなかった。そんなものは全くなかった。モンゴル人の住むその伝統のゲルはだ。
その代わりにだ。白い建物がこれでもかと建っていた。それはやけに硬そうなものだった。
彼はその建物達をみながらだ。呆然として通り掛かりの若い男に尋ねた。
「あの、あのゲルとは違うものは」
「ああ、ビルに。あと向こうにあるのは家だよ」
「ビル!?」
「んっ、あんた草原から出て来た人だな」
若い男はこう彼に言ってきた。モンゴル語でだ。
「そうだったんだな」
「そうなんだけれど」
「そうか。じゃあ何かと知らないことも多いよな」
「君モンゴル人だよね」
「ああ、そうだよ」
そのことはその通りだとだ。若い男は彼に笑顔で応えてきた。
「このウランバートルで生まれたんだ」
「草原じゃないんだ」
「そうさ。町で生まれ育ってるんだよ」
「ううん、モンゴルなのに」
「まあそういうモンゴル人もいるんだよ」
若い男が笑顔のまま話していく。そうしてだ。
彼はだ。こうテルグに言ってきた。
「で、俺の名前はな」
「あっ、僕はテルグっていうんだ」
「俺はトウルイ」
「いい名前だね」
「チンギスハーンの末息子の名前さ」
「そうだね。トウルイっていったらね」
その名前だった。チンギスハーン、彼等モンゴル人にとって最大の英雄のその四人の息子のうちの一人の名前だった。それが彼の名前だというのだ。
「いい名前じゃない」
「そうだろ。俺の自慢だよ」
「それでこのウランバートルに住んでるんだ」
「仕事は観光客相手にモンゴルの食べ物を売ってな」
「羊肉とか乳製品とか」
「特に馬乳酒をな」
モンゴル特有のだ。文字通り馬の乳から作った酒だ。
「あれが一番売れるな」
「町で商売してるんだ」
「草原じゃ草原の中でしてるんだったな」
「時々商人が来てね」
それで商いが行われる。商いは草原でも行われるのだ。
「そうしてるよ」
「俺はそういった商いはしてなくてな」
「この町でその観光客相手に」
「そうさ。まあ
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